2019 年 32 巻 4 号 p. 324-331
目的:下顎臼歯部単独植立したケースにおける,スクリュー固定法(以下スクリュー固定)およびセメント固定法(以下セメント固定)の経過を臨床的に比較検討することにより,より安定的なインプラント補綴を目指すことである.
対象および方法:筆頭著者の医院にて治療を完了した患者55名に対して下顎臼歯71部位を対象とした.単独植立インプラント全体の経過について,インプラント周囲粘膜炎,インプラント周囲炎,その他合併症の罹患に関してそれぞれの固定法の対比を調査し,それぞれの経過について考察した.
結果:単独植立インプラントは安定的な経過をたどった(残存率は98.6%であった).また,インプラント周囲粘膜炎の罹患に関しては,スクリュー固定においては埋入したインプラントが29本に対して5本で罹患率が17.2%であり,セメント固定は埋入したインプラントが42本に対して13本であり罹患率は31.0%であった.インプラント周囲炎については,スクリュー固定は埋入した29本に対して1本と罹患率が3.4%であった.セメント固定は埋入した42本に対して3本と罹患率が7.1%であった.そして,すべての調査項目においてスクリュー固定とセメント固定の間に統計学的有意差は示せなかった.
考察および結論:固定法の違いでインプラント周囲炎やインプラント周囲粘膜炎の有病率に統計的有意差は示さなかった.双方の利点,欠点を考慮し選択することが重要である.