日本口腔インプラント学会誌
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原著(基礎研究)
表面処理法および各種接着システムの種類がポリエーテルケトンケトンの接着に及ぼす影響
村上 高宏田中 譲治菅野 岳志笹谷 和伸水口 稔之岩野 義弘三輪 武人
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2019 年 32 巻 4 号 p. 332-338

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抄録

ポリエーテルケトンケトン(略号PEKK)は高い生体親和性を示すことから,インプラント治療への応用に期待されている.しかし,PEKKとレジンセメントを化学的に接着させることは困難であることが知られている.そこで,本研究では簡便な表面処理法であるロカテック処理およびサンドブラスト処理を用いて,各種接着システムの種類がPEKKとレジンセメントの接着強さに及ぼす影響を検討した.

各種接着システムはSuperbond/V primer(SB/VP),Superbond/PZ primer(SB/PZP),Panavia V5/Clearfil Ceramic Primer Plus(PV5/CP),グラスアイオノマーセメント(GI)を使用した.セメントおよびプライマーをメーカー指示どおりに用い,PEKK接着試験体を製作し,せん断接着強さを測定した.また,走査型電子顕微鏡(SEM)による観察ならびに表面処理後のPEKK表面の表面粗さの測定も行った.

その結果,PEKK表面にロカテック処理またはサンドブラスト処理すると,すべての接着システムにおいて接着強さの向上が認められた.しかし,ロカテック処理法はサンドブラスト処理法よりも有意に低い値を示し,多くの接着欠陥を認めた.サンドブラスト処理したPEKK表面にSB/PZPを用いると最大接着強さを示した.両処理面の表面粗さに有意差は認めなかった.

以上より,PEKK表面にロカテック処理を施すと,形成されたシリカコーティング膜は剝離膜として作用したため,サンドブラスト処理した場合よりも低い接着強さを示したと考えた.また,各接着システム間においては異なる接着強さの値を示した.

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© 2019 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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