2020 年 33 巻 1 号 p. 6-13
インプラントは欠損しているところを補うための材料であって,天然歯に代わるものではないという言葉があるように,歯を失った後に口腔機能回復を図るための治療オプションの一つである.歯の欠損に対する治療法としては,インプラントのほかにブリッジ,デンチャー,移植などがあり,それぞれに利点,欠点がある.そのなかでもインプラントには,固定性である,両隣在歯を削らなくてもいい(他の歯に負担を与えない),違和感が少ないなどの多くの利点があり,かつ長期間にわたる臨床研究においても良好な成績が報告されている.そのため近年は,安易に抜歯を選択し,インプラント治療を優先する治療計画が立案されているように思われる.しかしその一方で,社会の加速度的高齢化に伴い,インプラント周囲炎が大きな問題になっていることも事実である.
そのような背景を踏まえ,今回の講演では,「抜歯後にインプラント治療を計画する前に,まずはその歯の保存に全力を尽くそう」という基本に戻ることをテーマに掲げた.本稿では,難治性根尖性歯周炎を患い,抜歯と診断された歯が,本当にその必要があるのだろうかということを検証し,特に外科的歯内療法が歯の保存に大きく貢献していることを解説したい.