2021 年 34 巻 2 号 p. 124-130
インプラント治療は,抜歯を行う前の状態より優った機能や審美性を口腔内に創り出しうる欠損補綴の優等生といえる治療法である.一方,天然歯との顎骨における植立様式の違いや周囲組織構成の違いは,インプラント咬合への十分な配慮を求めるものである.しかし,MISCHがImplant-Protected Occlusionを提唱して以来現在まで,インプラント咬合の最適解は得られていない.そこでインプラントの咬合に対する考え方の変遷を顧みると,集積されたエビデンスに基づくコンセンサスをすくい上げることが可能である.
インプラントは顎口腔系を構成する要素の1単位であり,インプラント咬合の目指すものは,天然歯の咬合と変わるものではないことが基本と考えられる.しかし,非圧変位性と感覚受容性において天然歯と大きく異なるインプラントには,咬合接触関係で特有の配慮が必要になる.インプラントへの応力集中回避を第一義的に考えたImplant-Protected Occlusionはその意味で妥当性をもっている.ところが,その後の臨床研究はインプラントの咬合負担能力が当初の予想を超える可能性を明らかにし,インプラントの過度な保護は必要ないと考えられるようになった.ただし,ブラキシズムなどから発せられる非機能的な力に対しては十分な配慮が欠かせない.また,日本補綴歯科学会ポジションペーパーは対合歯の状態に応じた咬合調整法を提言しており,対合歯を含む口腔内全体を考慮した咬合付与が必要であることが改めて理解される.