2026 年 39 巻 2 号 p. 129-135
重度歯周炎患者に対するインプラント治療の応用は,術後の合併症やインプラント喪失のリスクが高いとされる.本症例では重度歯周炎患者に対して適切な検査,診断を行い,歯周組織再生療法を含む歯周治療の介入後にインプラント治療を行った.その後の継続的なSupportive periodontal therapy(SPT)により,長期的に良好な予後を得たので報告する.
患者は40歳,女性.他院において24本の抜歯が必要であることを説明されたため,歯の保存を希望し当院を受診した.多数歯の動揺と深い歯周ポケットを認め,全顎的な水平性骨吸収とともに垂直性骨吸収を多くの部位に認めた.可及的に歯を保存することと,インプラント治療前の炎症軽減を目的として徹底した歯周基本治療を行った.歯周外科治療時に多数歯の歯周組織再生療法を行い,矯正治療後にインプラント治療を行った.その後2~3か月ごとにSPTを行った.SPT 5年経過時に歯根破折にて1歯喪失したが,歯周炎の進行・再発による歯の喪失やインプラント周囲炎は認めず,10年経過した現在,歯周病の改善と良好な機能の回復を得られている.
このことから,重度歯周炎患者に対するインプラント治療においては,歯周治療など医師側の治療のみならず,患者側の長期的な口腔衛生管理へのモチベーションの維持が不可欠であると考える.これらの結果は,インプラント治療を単なる欠損補綴として捉えるのではなく,歯周病治療の延長線上に位置づける必要性を示唆するものである.