抄録
多形腺腫由来癌(carcinoma ex pleomorphic adenoma)は,長期間生体内に放置された多形腺腫や再発を繰り返した多形腺腫に発生しやすいとされている。
今回われわれは,頰部に発生した多形腺腫由来癌の1例を報告する。
患者は60歳女性,右側頰部の無痛性腫脹を主訴に当科を受診した。右側頰部に60×50mmの弾性硬,可動性を有する無痛性腫瘤を認めた。MR画像では右側頰部に境界明瞭で,T1強調像で中等度,T2強調像で中等度~高度の信号強度を呈した腫瘤を認めた。経口的アプローチにて腫瘍切除術を施行した際,一部腫瘍実質の露出を認めた。切除した腫瘍は低分化型腺癌NOS (not otherwise specified)を癌腫成分とする多形腺腫由来癌との診断であった。術後補助化学放射線療法を行い,現在術後2年2か月が経過し,腫瘍の再発や転移は認めていない。