抄録
口腔扁平上皮癌stage I, IIにおける後発頸部リンパ節転移例の治療成績を評価するために,多施設共同後ろ向き研究を行った。2002年から2011年までの10年間,各施設における後発頸部リンパ節転移141例を対象とした。初診時cN0の診断で予防的頸部郭清を行った27例との予後の比較検討も行った。
対象症例141例の5年累積疾患特異的生存率は75.7%で,全生存率は68.9%であった。頸部郭清の術式については,レベルIVあるいはVまで転移を認めたことから根治的頸部郭清術あるいはその変法を行うべきと考えられた。多発転移,レベルIVあるいはVまでの転移および被膜外浸潤は,強力な予後因子であることから,これらの因子をいずれか1つでも含む症例については,術後補助療法を検討するべきと考えられた。基本的には厳重な経過観察が可能であれば,予防的頸部郭清術の必要性はないものと考えられたが,明らかな潜在性リンパ節転移の予測因子を明らかにした上で,多施設による大規模な前向き試験も必要と考えられた。