日本口腔腫瘍学会誌
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26 巻, 3 号
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第32回日本口腔腫瘍学会・学術大会
シンポジウム2:「そこが知りたい!下顎再建のポイント」
  • 長谷川 和樹, 橋川 和信
    2014 年 26 巻 3 号 p. 53
    発行日: 2014/09/15
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
  • 山下 徹郎
    2014 年 26 巻 3 号 p. 54-56
    発行日: 2014/09/15
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
    下顎再建の適応は,下顎骨を切除した全ての症例に有る。その目的は下顎の形態的機能的改善により,人間の尊厳を取り戻し,究極的には全人格的回復に繋げる事である。ドナーに血管柄付き骨皮弁を用いる事は最適であり,その中で肩甲骨複合皮弁は骨皮弁・皮弁どうしの自由度が高く下顎と軟組織の同時再建に一番有用な選択肢である。最終的な機能回復に対してはインプラント義歯の装着が肝要である。
  • 橋川 和信
    2014 年 26 巻 3 号 p. 57-62
    発行日: 2014/09/15
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
    口腔腫瘍切除後の下顎区域欠損に対する新しい分類法「CAT分類」と再建理論「CATコンセプト」について報告する。それぞれの概要は以下の通りである:
    CAT分類—下顎骨における輪郭点である下顎頭(Condylar Head),下顎角(Mandibular Angle),オトガイ結節(Mental Tubercle)の3つ(両側で6つ)を基準点とし,それぞれをC点,A点,T点と定義する。これらの点の組合せで下顎区域欠損を分類する方法である。基準点を含む欠損の場合にそれぞれ「C」「A」「T」と分類し,複数の基準点を含む欠損の場合は「CA」「AT」「CAT」などとする。基準点のところで切除された場合は欠損に含まない。基準点を含まない下顎枝のみの欠損は「neck」,下顎体部のみの欠損は「body」とする。CATコンセプト—標準的な下顎再建手術を行うには,CAT分類の基準点であるC,A,Tを再現することが必要かつ十分な条件であるとする理論である。
    これまでの研究の結果,これらは下顎再建を標準化する際の有用な基本理論であることが示されている。
  • 櫻庭 実
    2014 年 26 巻 3 号 p. 63-68
    発行日: 2014/09/15
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
    血管柄付き腓骨皮弁は,長い骨が得られる,しなやかな皮弁が得られる,複数の骨切りが可能などの利点から,下顎再建に最も好まれる術式である。本稿では術式の詳細とそのキーポイントについて報告する。
    術前の計画として腓骨は下顎欠損と同側の下腿から採取する。腓骨と同時に適切な量の長母趾屈筋を同時に採取する。採取した筋肉は頸部郭清後の顎下部の死腔を充填するために用いる。
    手術は仰臥位でターニケット駆血下に行い,十分な大きさの皮島と骨を採取するように注意する。下顎骨形態の再現のための骨切りは,皮弁採取部の下腿で血流を保持して行う。骨形態の加工が終了したら腓骨皮弁を採取して頸部に移動する。
    頸部に移動した骨はミニプレートまたは下顎再建プレートを用いて残存する下顎骨に固定する。その際,中の一時的な顎間固定により,正しい咬合位を得ることが重要である。骨の固定が終了したら皮弁の血管と頸部の毛環吻合を行う。最後に腓骨皮弁の皮島を口腔内の粘膜欠損部に縫合,頸部皮膚を閉鎖して手術を終了する。
  • 長谷川 和樹
    2014 年 26 巻 3 号 p. 69-77
    発行日: 2014/09/15
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
    下顎骨の切除は咀嚼のみならず審美性,嚥下,構音など多くの機能に障害を生じることとなる。そのため下顎骨欠損の硬性再建を行うことは患者さんのQOLを回復するための非常に有効な手段となる。
    現在下顎骨の再建には腸骨,腓骨,肩甲骨など様々な部位の血管柄付骨皮弁が用いられている。しかしどの骨皮弁もそれぞれ長所,短所があり,必ずしも一つの皮弁にてすべての症例に適応できうるものではない。
    肩甲骨皮弁は口腔顎顔面外科領域の硬組織再建に広く用いられている骨皮弁の一つである。その栄養血管である肩甲下動静脈は二つの枝(胸背動脈,肩甲回旋動脈)に分かれ,さらに胸背動脈はAngular branchや前鋸筋枝を分岐する。そのためこの血管系は肩甲回旋動脈による肩甲骨弁,Angular branchによる肩甲骨弁,両者の血管柄を持つ肩甲骨弁,広背筋皮弁など様々な皮弁を栄養することができ,さらにこれらの皮弁を組み合わせた複合皮弁としても用いることができる。
    今回は当科にて行っている肩甲骨皮弁を用いた下顎再建につき,オトガイ部を含めた区域切除後の再建術式を中心として解説,さらに解剖,本皮弁の特徴,適応なども含め検討し紹介する。
  • 濱田 良樹, 山田 浩之, 熊谷 賢一, 中岡 一敏, 堀内 俊克, 川口 浩司
    2014 年 26 巻 3 号 p. 78-88
    発行日: 2014/09/15
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
    本論文では,カスタムメイド・チタンメッシュトレーと自家腸骨あるいは脛骨から採取した海綿骨骨髄細片(Particulate Cancellous Bone and Marrow, PCBM)を用いた下顎骨再建について紹介することを目的とした。また,この再建法を適用した17例の臨床経過をretrospectiveに調査することで,その臨床的有用性について検討した。
    手術は全例支障なく終了しており,平均手術時間は452分であった。各患者におけるPCBMの採骨量は十分で,具体的な採骨量は37~113gであった。術後経過は歯科補綴治療も含めて概ね良好であったが,オトガイ部を含む下顎骨欠損を伴う3例で2重構造のトレーを用いた再手術が施行されていた。再手術となった理由は,1例は術後の局所感染により移植骨が多量に失われたためで,残る2例は,初回手術に用いた1重構造のトレーの破折であった。これら再手術後の経過は良好で,以後,著者らは,オトガイ部を含む下顎骨再建の際には,必ず2重構造のトレーを適用している。それ以来,トレーの破折は確認されていない。術後の無痛開口域は平均45.6mmで,日常生活に大きな支障を来していなかった。術後の顔貌については,下顎前歯部の欠損による下唇の内翻,あるいは若干の顔貌の非対称を伴う数例において満足度が低かったが,ほとんどの症例において満足度は高く,左右対称で自然なカントゥアーを有する顔貌を獲得しており,術後の顔貌に対するVASの平均値(全例)は79.8であった。
    以上より,今回紹介した下顎骨再建法は,高い予知性を期待することができる臨床的に有用な方法と考えられた。
  • 兵藤 伊久夫, 奥村 誠子, 水上 高秀
    2014 年 26 巻 3 号 p. 89-94
    発行日: 2014/09/15
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
    下顎悪性腫瘍区域切除後の骨性再建において遊離腓骨皮弁は有用な再建方法の一つである。今回,当院で施行した6例の腓骨皮弁再建後5年以上経験した長期症例を検討した。
    全例常食が摂取可能で,会話機能においても問題なかった。日常生活に制限を認める症例もみられなかった。皮弁採取による足趾変形や歩行障害を認める症例はなかった。
    腓骨皮弁による下顎再建は,長期的にみても有用な再建方法であると思われた。
原著
  • 望月 美江, 小林 明子, 山城 正司, 山口 聰, 原田 清
    2014 年 26 巻 3 号 p. 95-102
    発行日: 2014/09/15
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,舌癌術後患者22名の舌の知覚(温覚,冷覚,触覚,熱痛覚)を調査することである。22名中11名は舌半側切除および前腕皮弁を用いた舌再建を行った(皮弁群)。残りの11名は舌部分切除術後の患者で,6名は創を一期縫縮,5名は人工真皮による創被覆を行った(舌部分切除群)。
    すべての感覚回復が皮弁群において1名に認められ,舌部分切除群では5名に認められた。すべての感覚回復が認められなかった患者は皮弁群が2名,舌部分切除群では0名であった。患側において温覚閾値は冷覚および触覚閾値と比べて回復が遅い傾向にあった。統計学的に感覚回復に影響する有意な要因は認められなかった。
  • 柳本 惣市, 上田 倫弘, 山下 徹郎, 太田 嘉英, 大鶴 光信, 栗田 浩, 鎌田 孝広, 大倉 正也, 相川 友直, 古森 孝英, 重 ...
    2014 年 26 巻 3 号 p. 103-112
    発行日: 2014/09/15
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
    口腔扁平上皮癌stage I, IIにおける後発頸部リンパ節転移例の治療成績を評価するために,多施設共同後ろ向き研究を行った。2002年から2011年までの10年間,各施設における後発頸部リンパ節転移141例を対象とした。初診時cN0の診断で予防的頸部郭清を行った27例との予後の比較検討も行った。
    対象症例141例の5年累積疾患特異的生存率は75.7%で,全生存率は68.9%であった。頸部郭清の術式については,レベルIVあるいはVまで転移を認めたことから根治的頸部郭清術あるいはその変法を行うべきと考えられた。多発転移,レベルIVあるいはVまでの転移および被膜外浸潤は,強力な予後因子であることから,これらの因子をいずれか1つでも含む症例については,術後補助療法を検討するべきと考えられた。基本的には厳重な経過観察が可能であれば,予防的頸部郭清術の必要性はないものと考えられたが,明らかな潜在性リンパ節転移の予測因子を明らかにした上で,多施設による大規模な前向き試験も必要と考えられた。
症例報告
  • 土井 理恵子, 小谷 勇, 木谷 憲典, 田村 隆行, 岡本 秀治, 岡本 充浩, 吉田 優, 奈良井 節, 領家 和男
    2014 年 26 巻 3 号 p. 113-121
    発行日: 2014/09/15
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
    社会の高齢化や検査技術の進歩により,重複癌の症例が増加傾向にあることが報告されている。
    口腔癌における重複癌の発生部位は消化管,特に食道と胃に多いとされ,悪性リンパ腫(以下ML)との重複はまれである。今回われわれは,MLの第二癌として下顎の扁平上皮癌(以下SCC)を発症した異時性重複癌の2例を経験したのでその概要について報告する。いずれも病変は侵襲性を示し病態の進行が急速であった。
    症例1は62歳男性で,口腔のSCCを発症する前に慢性リンパ性白血病/小細胞リンパ腫(以下CLL/SLL)を発症していた。化学放射線療法後に手術を施行したが,腫瘍は術後2か月で再発した。
    症例2は83歳男性で,加齢性Epstein-Barr Virus(以下EBV)陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(以下DLBCL)の加療中に口腔のSCCを発症した。加齢性EBV陽性DLBCLの治療を中止しSCCの手術を行った。術後に加齢性EBV陽性DLBCLの病勢が悪化したためエトポシドを再開した。口腔SCCの再発はみられていない。
    第二癌としての口腔SCCは侵襲性が高く,これにはMLや化学療法による長期間の免疫機能抑制の影響があるものと思われた。
  • 沖田 美千子, 針谷 靖史, 石戸 克尚, 原田 雅史, 関口 隆, 中山 英二, 篠原 敏也
    2014 年 26 巻 3 号 p. 123-129
    発行日: 2014/09/15
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
    口腔領域の転移性腫瘍はまれであるが,その多くは下顎骨に発生し,口腔粘膜組織への腫瘍の転移は非常に珍しい。われわれは,軟口蓋へ転移したきわめてまれな腎細胞癌の1例を報告する。
    患者は75歳の男性で,軟口蓋の腫瘤形成を主訴に当科を受診した。既往歴として,患者は33か月前に多発性肺転移を伴う腎細胞癌のため根治的左腎摘除術を受け,その後には補助的な免疫療法が行われた。臨床所見では,軟口蓋に弾性軟,表面平滑で無痛性の13×10mm大の腫瘤が認められた。MRI所見では,軟口蓋にT2強調画像で高信号を示し,比較的境界明瞭な軟組織腫瘤が認められた。臨床診断は軟口蓋の唾液腺原発悪性腫瘍とした。
    全身麻酔下に術中迅速診断を併用し,7~8mmの安全域を設け確実な外科的切除を行った。切除組織の病理組織学的所見では,軟口蓋の淡明細胞癌であり,既に切除された腎細胞癌に類似していた。さらに,抗CD10抗体および抗vimentin抗体による免疫組織化学的検討では,いずれも腫瘍細胞に強い陽性所見が観察され,このことは鑑別診断において重要であった。病理組織学的および免疫組織化学的所見から,軟口蓋腫瘍の最終診断は転移性腎細胞癌とした。
    口蓋腫瘍の外科的切除後25か月後の時点で,腫瘍の再発や肺転移巣の増大は認めていない。
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