抄録
急性呼吸促迫症候群(ARDS)は重篤な呼吸不全で死亡率は高い疾患である。われわれは,術後の口腔癌患者で発生したARDSの症例を報告する。症例は,76歳の男性,頰粘膜癌の根治手術を受けるために入院した。患者は根治手術後に腓骨皮弁の壊死をきたし,これが原因で術後感染を起こし,ARDSを発症した。胸部X線画像では両肺の肺胞浸潤が見られた。P/F比でも気管カニューレから8l/分の酸素流量で,99.1mmHgに低下した。人工呼吸管理,創部の外科的デブリードマンと薬物療法にて加療した。肺の酸素化は,P/F比は203mmHgに改善し,10日後に呼吸器から離脱した。