抄録
進展口腔癌切除後の舌, 口底, 中咽頭欠損を遊離組織移植術により再建した41例を対象として, 術後嚥下機能を評価し, 機能的再建術式および誤嚥防止策を検討した。遊離組織移植片は前外側 (内側) 大腿皮弁29例 (71%) , 橈側前腕皮弁5例, 腹直筋皮弁5例, 腓骨皮弁2例が用いられた。
口腔舌半側および舌半側欠損の再建は残存舌運動を妨げない方針で, 前大腿皮弁, 腹直筋皮弁, 橈側前腕皮弁のような柔軟な大きな皮弁により再建し, 良好な嚥下機能の回復が得られた。舌亜全摘, 舌全摘後の欠損は大きな前外側大腿皮弁により再建され, 再建舌に膨隆を持たせるために表皮を削除した皮弁近位部が充填された。この再建を受けた5例中3例は高度の嚥下障害が後遺した。再建舌に膨隆を付加し, 舌の沈下を防止する再建術式が必要である。また誤嚥を防止するために喉頭挙上術を再建時に施行すべきである。軟口蓋中咽頭側壁合併欠損は前外側大腿皮弁により再建され, 皮弁の遠位部の脂肪を削除し, 薄くして軟口蓋を修復し, 表皮を削除した近位部は側壁に膨隆を持たせるために充填された。再建軟口蓋は残存軟口蓋と良く同調した運動を示した。この再建術式により良好な鼻咽腔閉鎖と嚥下機能が得られた。