抄録
医薬品の適応外使用問題はアレルギー分野に限らず,世界的な小児領域の問題のひとつとなっている.既に,1990年代から米国や欧州では,それらの解決に向けて,特に法制化を含めた取り組みが進んできた.この,決定的な契機は,米国での AIDS のこどもに対する抗 HIV 薬の必要性から,小児の臨床試験の重要性が強調されたということであったという.
いずれも基本的には飴と鞭という考え方であって,製薬企業に,小児領域の医薬品開発を義務付けるとともに,従った場合にはインセンティブを与えるという方策である.
米国では1997年の FDAMA が2002年の BPCA,2003年の PREA に再認され,さらに2007年の FDAAA によってより強化された.
EU では2007年に Paediatric Regulation が施行された.
これら方策により,欧米では確実に,小児領域の医薬品開発が促進されている.日本にはこのような,小児の臨床試験を推進していくような法律や規則はまだないが,小児科医が安心して診療に専心でき,こどもに最良の薬物療法が提供できるような,これら活動を進めていくための何らかの方策が必要であることに,もはや説明は不要である.