日本小児アレルギー学会誌
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原著
不適切な食物除去が食物アレルギー患者と保護者に与える影響
長谷川 実穂今井 孝成林 典子柳田 紀之小俣 貴嗣佐藤 さくら富川 盛光宿谷 明紀海老澤 元宏
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2011 年 25 巻 2 号 p. 163-173

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抄録
目的 食物アレルギーの診療は手引きやガイドラインにより標準化されつつあるが,未だ不適切な除去による制限が患者及び保護者の生活の質(QOL)を低下させている例も少なくない.そこで多品目に及ぶ不適切な除去の指示が患者と保護者に与える影響を検証した.
方法 当科受診前に鶏卵,牛乳,小麦,米,大豆,肉,魚など主要食物5品目以上を含む多品目の除去を指示され,受診後それが大幅に是正された30名を対象に調査した.
結果 受診前後で患者の除去食物数は,12.0±2.8品から5.0±2.3品と大幅に減少し,除去解除率は,米,牛肉100%,鶏肉,豚肉80%以上,大豆,魚が50%以上だった.アンケート調査から,いずれも受診後に生活の物理的,精神的負担が有意に軽減され,除去食物数だけでなく,授乳中の母の厳しい食物除去や,厳格な回転食などが保護者の負担を増大させる要因となっていた.
考察 適切な診断に基づく食物除去によって,患者の様々な負担は大幅に軽減した.今後,食物アレルギー患者が標準的な診断を受け,最小限の食物除去に基づいた栄養指導で治療中もQOLが維持されることが望まれる.
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© 2011 日本小児アレルギー学会
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