日本小児アレルギー学会誌
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25 巻, 2 号
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原著
  • 池田 政憲, 和田 智顕, 加藤 哲司, 小寺 亜矢, 坂本 朋子, 高杉 瑞恵, 細木 瑞穂, 野島 郁子, 高橋 伸方, 荒木 徹, 喜 ...
    2011 年 25 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    近年,吸入ステロイド薬(ICS)による抗炎症治療が広まり,喘息による入院数は小児科領域でも減少傾向をみせている.しかし,年齢区分別にみると,0~4歳の乳幼児では減少が認められず,入院数に占めるこの年齢層の割合は増加傾向を示している.海外ではICSの使用と喘息入院減少との関連性が報告されており,本研究では乳幼児喘息患児に適した剤形であるブデソニド吸入用懸濁液の導入前後の喘息入院数を,地域医療圏において調査した.結果は,導入後に明らかな喘息入院の減少傾向を認めた.諸外国と比較し,乳幼児におけるICS使用は未だ少ないと考えられる.今後,一層のICS治療の普及と,それによる喘息入院の減少を図ることが重要と考えられる.
  • 白崎 仁幸子, 河北 亜希子, 吉川 利英, 安冨 素子, 畑 郁江, 重松 陽介, 眞弓 光文, 大嶋 勇成
    2011 年 25 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    食物アレルギーに対する厳格な食物除去との関連が示唆される軽度発達遅延と血清クレアチニンキナーゼ上昇,低カルニチン血症を呈した10か月女児例を報告する.姉が卵アレルギーのため母親は妊娠授乳中菜食主義にし,患児自身は厳格な食物制限が行われていた.血清カルニチン,クレアチニンキナーゼの異常は,L-カルニチン補充と栄養指導により速やかに改善した.食物アレルギーの治療において,厳格な食物制限や不適切な代替食はカルニチン欠乏と筋疾患の原因となる可能性が考えられた.
  • 西牟田 敏之, 米澤 博, 西間 三馨
    2011 年 25 巻 2 号 p. 138-150
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    小児気管支喘息患者(5~15歳)167名を対象として多施設共同,無作為化,群間比較により,シクレソニドの加圧噴霧式定量吸入器(以下,BTR-15)50μg/日, 100μg/日及び200 μg/日(1日1回)の8週間投与時の有効性及び安全性を,HFA-BDP 100μg/日(1日2回)を参照薬として比較検討した.
    本試験には217例が組み入れられ,解析対象は167例(女:69例,男:98例),年齢の中央値は8歳(5~15歳),小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005による重症度は,軽症持続型116例,中等症持続型50例,重症持続型1例であった.
    その結果,朝のPEF値の投与開始時に対する終了時(8週時又は中止時)変化量は,BTR-15 50μg投与群,100μg投与群,200μg投与群,及びHFA-BDP100 μg投与群のいずれの投与群においても統計学的に有意に増加し,主要な解析項目においてはすべての投与群に改善が認められた.すべての投与群の安全性に問題はみられなかった.
    喘息症状の重症度で層別した探索的解析では,軽症ならびに中等症持続型においてBTR-15のいずれの用量群でも有効性および安全性が確認された.また,BTR-15 200μg投与群に割り付けられた重症持続型(1例)においてPEF値,喘息症状の改善がみとめられ,有害事象の発現はなかった.
    以上のことから,BTR-15は臨床上有用な薬剤であると考えられた.
  • 西牟田 敏之, 米澤 博, 西間 三馨
    2011 年 25 巻 2 号 p. 151-162
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    小児気管支喘息患者(5~15歳)69名を対象とした多施設共同非盲検試験により,シクレソニドの加圧噴霧式定量吸入器(以下,BTR-15)50μg/日, 100μg/日及び200μg/日(1日1回)の28週間投与時の安全性及び有効性を検討した.69例の全例を安全性及び有効性解析に採用した.
    その結果,長期投与における特徴的な有害事象の発現傾向はなく,BTR-15 50μg/日から200μg/日までの範囲で28週間の長期投与時の安全性に問題はなかった.また,喘息症状に応じたBTR-15 50~200μgの1日1回投与の使用によりPEF値が適切にコントロールされ,有効性は投与28週後まで維持されることが示された.
  • 長谷川 実穂, 今井 孝成, 林 典子, 柳田 紀之, 小俣 貴嗣, 佐藤 さくら, 富川 盛光, 宿谷 明紀, 海老澤 元宏
    2011 年 25 巻 2 号 p. 163-173
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    目的 食物アレルギーの診療は手引きやガイドラインにより標準化されつつあるが,未だ不適切な除去による制限が患者及び保護者の生活の質(QOL)を低下させている例も少なくない.そこで多品目に及ぶ不適切な除去の指示が患者と保護者に与える影響を検証した.
    方法 当科受診前に鶏卵,牛乳,小麦,米,大豆,肉,魚など主要食物5品目以上を含む多品目の除去を指示され,受診後それが大幅に是正された30名を対象に調査した.
    結果 受診前後で患者の除去食物数は,12.0±2.8品から5.0±2.3品と大幅に減少し,除去解除率は,米,牛肉100%,鶏肉,豚肉80%以上,大豆,魚が50%以上だった.アンケート調査から,いずれも受診後に生活の物理的,精神的負担が有意に軽減され,除去食物数だけでなく,授乳中の母の厳しい食物除去や,厳格な回転食などが保護者の負担を増大させる要因となっていた.
    考察 適切な診断に基づく食物除去によって,患者の様々な負担は大幅に軽減した.今後,食物アレルギー患者が標準的な診断を受け,最小限の食物除去に基づいた栄養指導で治療中もQOLが維持されることが望まれる.
短報
  • 秋谷 進, 宮本 幸伸
    2011 年 25 巻 2 号 p. 174-176
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    初経開始前から月経喘息を呈した13歳女児例を経験した.
    症例は8歳から気管支喘息を発症し,近医小児科で経過観察をされていた.
    小学校6年生になって,気管支喘息発作の出現が,1ヶ月程度の周期性を示すようになり,発作の2, 3日前より,全身倦怠感などが出現するようになった.
    中学1年生になって,初経開始後は喘息発作が月経開始2, 3日前から月経開始3日目まで続くようなり,月経随伴症状として,不安,いらいら感,疲れやすさ,だるさ,四肢のむくみ,睡眠障害が認められ,学校生活に支障が出るようになったため,月経前症候群と診断した.家族と本人の同意を得て,症状出現時のSSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)の適応外使用を開始したところ,著効した.
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2008解説「ガイドラインをどう読むか」
  • 大矢 幸弘
    2011 年 25 巻 2 号 p. 177-183
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    気管支喘息は慢性疾患であるが,患者教育をしなければ多くの患者は発作時の対応に関心が集まり非発作時の治療を怠りがちになるのが自然である.従って,患者教育で大切なことは,発作時の対応の仕方を教育することよりも,非発作時になぜ治療を続ける必要があるかを理解してもらうことである.すなわち症状がないときにも予防的に薬剤を服用し悪化因子の低減を図り続けるというガイドラインが示すProactiveな治療方針を理解してもらう必要がある.そのために,気道炎症に関する最小限の病態生理を説明し,治療目標を患者および保護者と共有する.そして受診した患者および保護者の動機や目的を把握し,共感に基づくコミュニケーションを行う.患者の発達段階に応じた教育を心がけ,喘息日誌やピークフローメーターなどによるモニタリングと個別対応プランなどを活用して,セルフケアに基づく喘息管理を実現しやすくする.治療目標を共有し信頼関係が確立したら,セルフケアに取り組む姿勢を評価して自己効力感を高めアドヒアランスの向上・維持を図る.
  • 岩田 力
    2011 年 25 巻 2 号 p. 184-190
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    日本小児アレルギー学会による小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2008(JPGL2008)の第15章「学校保健,予防接種,外科手術時の配慮」の要約を述べた.気管支喘息の長期管理を行う上で,小児科的な視点からは常に患児の発育と発達に留意する必要がある.いわゆる学校生活に関しては,日常のかなり細かな部分についても主治医は把握する必要があり,保護者から十分に話を聞いておく必要がある.予防接種は原則的にすべてを積極的に受ける.外科手術時には喘息症状の十分なコントロールが前提となる.
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