2016 年 32 巻 2 号 p. 181-186
先天性ミオパチーの一つであるネマリンミオパチーには,従来心筋症の合併は少ないとされてきた.今回われわれは,ACTA1遺伝子変異を伴うネマリンミオパチーに,非典型的な肥大型心筋症を合併した症例を経験した.1歳6か月時に歩容異常,2歳時に筋力低下および筋萎縮,7歳時に肥大型心筋症を指摘され,8歳時に筋生検で病理組織所見からネマリンミオパチーと診断し,ACTA1遺伝子の変異が同定された.心臓超音波検査および心臓カテーテル検査で心基部と心尖部の中間付近の壁が同心円状に肥大し,著明な拡張障害を伴う特徴的所見を示していた.β遮断薬を導入したところ心不全症状が増悪し,その治療中に心室細動を発症,9歳5か月で永眠した.これらの特徴は,心筋での細いフィラメントの遺伝子変異を伴う肥大型心筋症の特徴として報告されている所見に合致する.心臓合併症は稀とされるネマリンミオパチーにおいても,心筋症で致死的となる症例があり,慎重な心機能の評価および適切な治療が必要である.