日本小児循環器学会雑誌
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32 巻 , 2 号
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巻頭言
【特集:日本小児循環器学会第 12 回教育セミナー】
前文
Reviews
  • 森 一博
    2016 年 32 巻 2 号 p. 70-77
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    組織ドプラ法(TDI)は,ドプラ法により心筋運動速度を測定する心エコー検査である.成人では,4腔断面における僧帽弁輪または三尖弁輪運動のスペクトル表示から,長軸方向の収縮および拡張能を種々の疾患で評価することが推奨されている.一方,小児では先天性心疾患や術後症例で左室または右室機能に関して報告がなされている.しかしながら,年齢により正常値が異なることから実際の臨床の場で広く利用されているとは言いがたい.この総説ではTDIの各種指標の小児正常値を呈示すると共に,小児科領域でのTDI分析の有用性と問題点につき言及したい.一方,僧帽弁輪または三尖弁輪収縮期移動距離はM-modeで両心室の長軸機能を評価する簡便な方法である.本総説ではこの指標の小児正常値と臨床応用に関しても呈示する.これらの指標は通常の超音波診断装置で解析可能であり,小児循環器領域での心機能解析に際して利用されるよう願っている.
  • 増谷 聡
    2016 年 32 巻 2 号 p. 78-86
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    Speckle tracking法は,B-modeエコー画像上の小斑点(speckle)を追跡する手法である.組織ドプラの角度依存性の弱点を克服し,心筋局所の機能だけでなく,壁運動の協調・同期不全・虚血や,心室全体としての機能(グローバル・ストレイン)を評価できる.本法の測定値にはメーカーによる差異があること,臨床でどのように検査結果を活かしたらよいかの明瞭なガイドがないこと,など課題が多いが,局所と全体,同期を簡単に同時評価できる優れた方法である.本機能を搭載した最近のエコー機器を用いれば,基本断面を正確に描出できる検者であれば容易に使用を開始できる.解析結果は,心電図を付けて明瞭なB-modeを記録すること,どの指標を測定するか選択すること,関心領域を指定すること,以上3点で簡単に得られる.しかし本法は比較的新しく,一見難解な印象があり,小児循環器医のなかでも必ずしも使用は拡大していない.本稿では2D Speckle tracking法の使用開始にあたり必要なポイントと基礎知識を概説する.
  • 瀧聞 浄宏
    2016 年 32 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    超音波装置,探触子および解析ソフトウエアー等における著しい技術の進歩により,3D心エコー法により得られた画像のクオリティは飛躍的に向上した.現在では,先天性心疾患に対する診断や治療にも有用なツールであるといっても過言ではない.実臨床で有用な活用法の1つは,複雑な心内形態を3D表示し,それに基づいて修復術のプランニングやガイドを行うことである.例えば,両大血管右室起始症における心室中隔欠損を用いた心内ルート作成,複雑な房室弁閉鎖不全の形成,肺静脈還流の異常や狭窄の修復などが挙げられる.これら疾患に対して,収集した3Dデータをクロッピングという再構築を行い,複雑な心内構造を外科医からの視点(Surgeon’s view)で観察する.これにより,病態と手術法について,外科医と循環器医でより深いdiscussionを行うことが可能となる.本稿では,心内の3次元的な解剖学形態評価を基にした外科的修復術のガイドの方法について小児の心エコー初心者にも理解できるように概説したい.
  • 新居 正基
    2016 年 32 巻 2 号 p. 95-113
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    先天性冠動脈異常には①冠動脈起始部位と走行形態の異常,②冠動脈開口部の狭窄・閉鎖,③冠動脈血管自体の異常,および④冠動脈終末端の異常の4種類が存在する.起始部位の異常には大動脈基部における異所性開口に加えて,肺動脈や腕頭動脈等,大動脈基部以外の血管からの起始異常も含まれる.これらの異常は常に単独で存在するわけではなく,様々な組み合わせで存在しうる.希少疾患とはいえ小児循環器に携わる医師は十分な知識を持つことが求められ,特に①と②の異常のなかには突然死の原因となる病態が含まれることを銘記しておく必要がある.ただ,これらを安静時心電図で捉えることは困難であり,現在日本で行われている学校心電図検診ではスクリーニングが困難な疾患の一つである.北米においても運動時突然死の原因疾患として心筋症に次いで重要な心構造異常として注目されてきており,スクリーニング方法の模索が始まっている.一方,先天性冠動脈異常は先天性心疾患にも合併しうる.これらのなかには術中・術後経過に大きく関わる病態も存在することから,術前の正確な診断が重要である.先天性冠動脈異常について最新の知見を加えるとともに概説を記した.
  • 中野 俊秀
    2016 年 32 巻 2 号 p. 114-121
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    先天性心疾患の外科治療における周術期の冠動脈関連合併症の原因は手術手技そのものによるものと疾患自体が持つ特性によるものがある.前者は完全大血管転位症や大血管転位型両大血管右室起始症に対する動脈スイッチ手術に代表される.動脈スイッチ手術における安全な冠動脈移植には冠動脈の走行パターンのみならず冠動脈移植方法,また大血管の位置関係や肺動脈の再建方法を総括して考えなければならない.また後者では右室―冠動脈類洞交通を伴うPulmonary atresia-intact ventricular septum(PA-IVS)が最も重要である.術中にいかに冠動脈血流を維持し心筋虚血を防ぐかに重点を置き手術術式と体外循環法を考える必要がある.その他,ファロー四徴症などの疾患にも冠動脈走行異常が少なからず存在することを念頭に置き,術前検査と術中の確認,術式の選択に注意を払う必要がある.
  • 井本 浩
    2016 年 32 巻 2 号 p. 122-128
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    冠動脈異常の発生率は1.3%程度と,まれではない.多くは偶然発見され自覚症状を伴わない場合も多い.しかし,なかには心筋梗塞,不整脈,突然死などの重篤な合併症を引き起こす場合がある.左冠動脈が右バルサルバ洞から起始する異常,なかでも大血管間を走行するものは若年運動選手での突然死の原因の一つとして知られており,自覚症状がなくても手術を行うべきである.負荷心電図で陰性のものも多く,疑った場合には必ず心エコー,造影CTなどの冠動脈形態の検査を行うことが重要である.左冠動脈肺動脈起始では生後早期より重症の心筋虚血,左室不全,僧帽弁閉鎖不全などを生じることが多く,しばしば心筋症や先天性の僧帽弁疾患と間違われる.乳児期早期のtwo-artery coronary systemの確立が必要である.冠動脈瘻は心筋虚血や短絡による心不全が問題となり,基本的には自覚症状で手術適応が決まる.症例によってカテーテル閉鎖も可能であり,あるいは冠動脈バイパス術が必要な場合もあるので,術前の形態診断が重要である.狭心痛,心筋虚血,不整脈,心不全などの症状の患者を診る際には冠動脈異常を鑑別診断に加えることが重要である.
Reviews
  • 新垣 義夫
    2016 年 32 巻 2 号 p. 129-140
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    小児循環器専門医に必要な小児循環器領域の身体診察(Physical examination)の位置づけおよび身体所見(Physical findings)のポイントについて解説する.身体診察の位置づけとして重要な点は,1)問診,2)身体診察,3)検体検査,4)画像検査の4つの診断手段から病態モデル(診療仮説)を作成することである.得られた病態モデル(診療仮説)から再度所見を説明する.身体診察に必要な基本的事項として,心周期,3つの主要な心拡大の要因(短絡,弁逆流,心筋障害),心臓の位置を理解しておくと身体診察が進めやすくなる.さらに,身体所見を心血管系の大きさや内圧を推測するつもりで診察する.4つの心腔,4つの大血管の圧曲線や心腔の容積をイメージするように所見をとり,それをもとに診断を行い(診断仮説を作る),診断をもとにさらに身体所見を説明することが重要である.
  • 大内 秀雄
    2016 年 32 巻 2 号 p. 141-153
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    フォンタン手術は単心室循環患者のQOLや生命予後を著しく改善したが,その術後病態は極めて多様で,他の先天性心疾患患者術後に比べ予期しない入院や死亡の頻度は依然として高い.最近の医療の進歩によりフォンタン手術の成績が格段に改善したが,術後遠隔期の高い臨床事故予防や軽減に向けた治療管理戦略がほとんど確立できていない.その高頻度の事故の背景には特異な循環の病態把握がいまだ不十分であることに加え,この特異な循環不全病態の長期予後(一生)の全容が不明である現状がある.我々の施設ではフォンタン術後患者の長期予後改善を目指し,定期的な血行動態評価,心肺運動負荷試験,さらには糖代謝や肝腎機能評価といった総合的な評価を継続している.これらの試みで,心血管機能に加え,多臓器機能を含めたフォンタン病態が徐々に明らかとなりつつある.しかし,一方で様々な新たな病態が明らかになっている現状がある.
原著
  • 本橋 宜和, 島田 亮, 佐々木 智康, 勝間田 敬弘, 團 和則, 筒井 康弘, 根本 慎太郎
    2016 年 32 巻 2 号 p. 154-159
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    肺血流量減少性疾患に対して鎖骨下動脈と肺動脈を人工血管で接続するmodified Blalock–Taussig shunt手術(BTS)は今もなお重要な姑息手術である.BTS人工血管によって供給される肺血流の過大と過小は患者の臨床経過を決定する重要な因子であり,単心室の新生児及び早期乳児では時に致死的イベントを来す大きな要因となる.しかしながら,BTS血流量の最適化のための人工血管サイズ及び吻合部位の選択基準が明確ではなく,術直後の血流過多によるショックへの緊急対応や遠隔期の血流過小に対するBTS追加手術を必要とすることがしばしば発生する.この問題解決のためには,シャント血流を任意に調節可能となることが望まれる.今回我々は,小口径人工血管周囲に特殊構造のバルーンを設置し,皮下ポートに接続することで経皮的にバルーン容量を変化させる装置を開発した.模擬循環回路では,バルーン容量の可変により再現性のある人工血管の圧–流量関係の変化を認めた.ビーグル犬を用いた生体内埋植モデル(右頚動脈を本装置を装着した人工血管で置換)では,埋殖直後及び,3か月後においてバルーン容量可変による流量調整が可能であった.本装置により,誰もが容易にBTS流量を調整することが可能になると考えられた.
  • 中嶌 八隅, 森 善樹, 金子 幸栄, 井上 奈緒, 村上 知隆, 磯崎 桂太朗, 渡邊 一正, 小出 昌秋
    2016 年 32 巻 2 号 p. 160-167
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:極低出生体重児(VLBWI)の救命率は著しく向上したが,先天性心疾患(CHD)を伴うVLBWIの検討は少ない.
    目的:CHD合併のVLBWIの概要,中期予後の明らかにすること.
    方法:2000~2006年に当院NICUに入院した456例のVLBWIを対象とした.CHDの診断は臨床症状含め全例心エコー検査で行い,手術,剖検例はその診断に従った.対象をCHD群,非CHD群にわけ,在胎週数,出生体重,染色体異常・奇形症候群,心外奇形合併率,また壊死性腸炎,慢性肺疾患などの罹病率と死亡率を両群間で比較した.CHD群では疾患別内訳,治療内容を検討した.
    結果:CHD群は26例で,心疾患の発生は出生1,000に対して57人だった.染色体異常・奇形症候群,心外奇形合併はCHD群でそれぞれ38.5%,34.6%,非CHD群では1.9%,7.2%に見られ,非CHD群に比較しCHD群で有意に高率だった(p<0.05).疾患の内訳は心室中隔欠損症が最も多く(10例,38.5%),次いで大動脈縮窄症(3例,11.5%),房室中隔欠損,肺動脈狭窄,大動脈弁狭窄(各2例,7.7%)などであった.心臓手術は10例(38.5%)で施行され,約60%のVLBWIが循環作動薬を含めた内科的治療を必要とした.壊死性腸炎,頭蓋内出血,慢性肺疾患の罹病率,NICU入院期間は両群間で差はなかったが,CHD群の病院死亡率は26.9%,5年生存率は65.4%で,非CHD群(11.9%,86.2%)と比較して病院死亡率が高く,生存率は低かった(p<0.05).
    結語:一般のCHDの頻度に比較してVLBWIにおけるCHD頻度は高い可能性があり,早期から治療を要する重症なCHDが多い.またCHD症例は染色体・奇形症候群,また消化管奇形などの心外奇形の合併が多く,CHDを伴わないVLBWIに比較して予後は悪い.
症例報告
  • 森 浩輝, 清水 美妃子, 豊原 啓子, 稲井 慶, 島田 光代, 古谷 喜幸, 吉澤 佐恵子, 宇都 健太, 西川 俊朗, 池田 健太郎, ...
    2016 年 32 巻 2 号 p. 171-178
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    不整脈原性右室心筋症(ARVC)は若年での発症は稀とされている遺伝性心筋症である.今回我々はARVCを発症し重症心不全のため心臓移植を要した小児例を経験したので報告する.学校心臓病検診で心室性期外収縮を指摘された9歳男児.精査の結果,不整脈原性右室心筋症と診断された.心臓MRIでは右心室の拡大,収縮能低下に加え,左心室でも拡大と収縮能低下が顕著であった.心不全症状の進行によりカテコラミン離脱困難であったため同種心臓移植の適応と判断され,初診から約18か月の経過で心移植に至った.Desmoglein 2(DSG2; c.1481 A>C: p.Asp494Ala)とtransmembrane 43(TMEM43; c.601G>A: p.Asp201Asn)の2つの不整脈原性右室心筋症の原因遺伝子に変異を認めたことから,これらの変異の重複が早期発症,重症化の原因となった可能性があると考えられた.
  • 横山 晶一郎, 小出 彩香, 西野 一三, 林 由起子, 大木 寛生, 三浦 大, 澁谷 和彦
    2016 年 32 巻 2 号 p. 181-186
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    先天性ミオパチーの一つであるネマリンミオパチーには,従来心筋症の合併は少ないとされてきた.今回われわれは,ACTA1遺伝子変異を伴うネマリンミオパチーに,非典型的な肥大型心筋症を合併した症例を経験した.1歳6か月時に歩容異常,2歳時に筋力低下および筋萎縮,7歳時に肥大型心筋症を指摘され,8歳時に筋生検で病理組織所見からネマリンミオパチーと診断し,ACTA1遺伝子の変異が同定された.心臓超音波検査および心臓カテーテル検査で心基部と心尖部の中間付近の壁が同心円状に肥大し,著明な拡張障害を伴う特徴的所見を示していた.β遮断薬を導入したところ心不全症状が増悪し,その治療中に心室細動を発症,9歳5か月で永眠した.これらの特徴は,心筋での細いフィラメントの遺伝子変異を伴う肥大型心筋症の特徴として報告されている所見に合致する.心臓合併症は稀とされるネマリンミオパチーにおいても,心筋症で致死的となる症例があり,慎重な心機能の評価および適切な治療が必要である.
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