2021 年 37 巻 2 号 p. 144-150
カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)は,若年期に失神,心停止を起こす致死性遺伝性不整脈の一つであり,10年生存率が60%程度と予後の悪い疾患である.患者の50~60%に心筋リアノジン受容体遺伝子(RYR2)変異が認められるが,多くが弧発例で国内の家族内発症は非常に少ない.今回,34歳女性を発端者とする,若年での複数の家族内突然死歴のあるCPVTの一家系を報告する.遺伝子検査を施行し,発端者とその妹2人,息子,姪にRYR2の新規の病的バリアント(F4087L)を認めた.発端者とその妹らはβ遮断薬やフレカイニドの内服と植込み型除細動器(ICD)を植込み,ICDにより心室細動は停止している.また,β遮断薬にフレカイニド内服を追加し,不整脈を抑制できている児もいる.早期の診断により,患者のみならず幼児を含む無症状患者にも,突然死の一次予防としての治療や医療介入が可能と考える.