日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
Reactive Hyperemia-Peripheral Arterial Tonometry (RH-PAT)により血管内皮機能障害が示唆された冠攣縮性狭心症の10歳男児例
池田 翔石井 卓細川 奨野村 知弘長島 彩子渡邉 友博土井 庄三郎
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2021 年 37 巻 3 号 p. 220-226

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抄録

冠攣縮性狭心症(Coronary Spastic Angina: CSA)を小児期に発症することは稀であり,その病態も不明な部分が多い.症例は10歳男児で,以前より非運動時に15~30分ほどの胸痛を認めていた.就寝中に突然絞扼感を伴う左前胸部痛が出現し,30~40分で自然軽快した.心電図で広範な誘導におけるSTの上昇を認め,心筋逸脱酵素も有意に上昇していた.心エコーで急性心筋炎や冠動脈の器質的疾患を疑う所見を認めず,CSAを疑い硝酸薬を開始した後は症状再発なく経過した.アセチルコリン負荷試験では冠動脈3枝のびまん性の攣縮とV4–6でのST上昇を認めた.CSAと診断してカルシウム拮抗薬の内服を開始し,以後,狭心症状はみられていない.退院後に施行したReactive Hyperemia-Peripheral Arterial Tonometryでは血管内皮機能の指標である反応性血管指数が1.17と正常下限(1.67)を大きく下回っていた.基礎病態として全身性の血管内皮機能障害の存在が示唆され,小児期発症CSAの病態に関与する可能性があると考えられた.

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