2021 年 37 巻 4 号 p. 277-282
内臓心房錯位症候群に伴う機能的単心室における共通房室弁逆流は,フォンタン到達と遠隔生存のため,肺静脈狭窄と共に克服すべき課題である.共通房室弁形成は主として両共通尖のedge to edge縫合とあるいはbridging stripを用いた2弁口化に,裂隙閉鎖や交連形成,部分弁輪縫縮を組み合わせて行われる.弁置換はやむなく選択される場合があるが,その治療効果に関しては議論の余地がある.治療的/予防的弁形成共に両方向性グレン手術との同時手術として行われる傾向にある.弁形成の成績は診断技術の進歩と相まってここ10年で向上しているが,両方向性グレン以前に介入を要する逆流に対する治療成績は未だ不良である.成長力のある小口径人工弁の開発,移植医療の普及とともに,更なる形成技術の向上が望まれている.