日本小児循環器学会雑誌
Online ISSN : 2187-2988
Print ISSN : 0911-1794
ISSN-L : 0911-1794
37 巻, 4 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
Review
  • 櫨木 大祐, 吉永 正夫
    2021 年 37 巻 4 号 p. 255-264
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    本邦の学校心臓検診(心臓検診)の制度は1973年に文部省学校保健法施行規則が改正されて開始された.現在のように小学1年・中学1年・高校1年生全員の心電図検査が行われるようになったのは1994年12月の改正からであり,世界的にも類を見ないこの全国的な心臓検診システムにより心疾患の早期発見および突然死の防止につながっている.診断方法や治療デバイスの発達によるガイドラインの変更など,時代に合わせて変遷した結果,現在の小児心臓突然死減少がもたらされている.最終的な目標として小児心臓突然死ゼロを目指す小児循環器医療従事者に必要と思われる最新のガイドラインや,本邦における小児の突然死の状況,特に心臓検診での発見が可能な肥大型心筋症について解説する.

  • 永田 弾
    2021 年 37 巻 4 号 p. 265-276
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    先天性心疾患の出生前診断が普及するとともに,小児循環器医療はこの20年前で大きく変化してきた.先天性心疾患の胎児診断率やその精度は21世紀に入り明らかに向上し,出生後の予後にも影響を及ぼしている.しかしながら,単独の総肺静脈還流異常症などの診断率は高くなく,これらの診断率を上げていくことが今後の課題となる.また,胎児診断に基づいた出生後の適切な新生児管理や胎児治療も今後の取り組むべき課題であろう.胎児治療のなかでも胎児カテーテル治療は日本ではこれからの分野であり,適応患者を抽出し,安全性を担保しつつ有効性の確認を行っていかなければならない.この総説では,筆者の経験や研究と過去の論文をもとに先天性心疾患の胎児診断と胎児心エコーの基本,そして,胎児カテーテル治療について述べた.皆様の今後の診療に少しでもお役に立てるならば幸いに思う.

  • 帆足 孝也, 市川 肇
    2021 年 37 巻 4 号 p. 277-282
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    内臓心房錯位症候群に伴う機能的単心室における共通房室弁逆流は,フォンタン到達と遠隔生存のため,肺静脈狭窄と共に克服すべき課題である.共通房室弁形成は主として両共通尖のedge to edge縫合とあるいはbridging stripを用いた2弁口化に,裂隙閉鎖や交連形成,部分弁輪縫縮を組み合わせて行われる.弁置換はやむなく選択される場合があるが,その治療効果に関しては議論の余地がある.治療的/予防的弁形成共に両方向性グレン手術との同時手術として行われる傾向にある.弁形成の成績は診断技術の進歩と相まってここ10年で向上しているが,両方向性グレン以前に介入を要する逆流に対する治療成績は未だ不良である.成長力のある小口径人工弁の開発,移植医療の普及とともに,更なる形成技術の向上が望まれている.

  • 福島 直哉, 山岸 敬幸
    2021 年 37 巻 4 号 p. 283-294
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    先天性気管狭窄は,気管軟骨が気管全周にわたり完全輪状軟骨輪を形成し,狭窄所見を呈する疾患である.多くは新生児・乳児期早期から,呼吸器症状が出現する.半数以上の症例で先天性心血管疾患を合併し,特に肺動脈スリングが多い.小児循環器科医・小児心臓血管外科医が診断と管理を担う機会が多いが.呼吸状態と循環動態が相互に影響しながら病態を形成するため,小児外科医,小児呼吸器科医,麻酔科医,小児集中治療医,新生児科医との緊密な連携診療が必要である.本総説では,心血管疾患との合併を念頭に発生・解剖・病態を説明し,手術介入の要点を概説する.

  • 早渕 康信
    2021 年 37 巻 4 号 p. 295-306
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    小児循環器領域において右室機能解析を要する場面は多いが,正確な右室機能を測定評価することは簡単ではない.右心不全を呈する病態を分類すると,圧負荷,容量負荷,心筋障害の3つの機序が原因として挙げられるが,実際には様々な程度でこれらは混在することが多い.これらのうち右室機能障害の最も重要な原因は肺高血圧症であり,圧負荷に対する右室機能解析は同疾患の予後規定因子として評価が重要であるというだけではなく,右室機能障害を来す他疾患への応用と右室挙動の普遍的な解析のための基軸研究となり得る点で意義深い.

    本総説では正常右室の構造・機能を解説したのち,右室機能障害の評価方法について説明する.右室機能障害は,右室全体の収縮機能の変化だけでなく,収縮様式,右室-肺動脈カップリング,同期性,心室間相互作用,拡張能などの障害も含んでいることを解説していく.

症例報告
  • 上嶋 和史, 丸谷 怜, 西 孝輔, 髙田 のり, 杉本 圭相, 稲村 昇
    2021 年 37 巻 4 号 p. 307-311
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    心血管疾患に起因する小児の胸痛は稀である.また,臨床現場では狭心症や心筋炎を鑑別することが重要である.今回,胸痛・腹痛を主訴に発症し,冠攣縮性狭心症の診断に苦慮した9歳男児例を経験したので報告する.症例は9歳の男児で,2週間前に喘息発作の治療を受けていた.2日前から右胸痛を自覚し,夜中に右側腹部痛を訴え近医を受診した.血液検査にてCRP高値とトロポニンT陽性から急性心筋炎が疑われ当院紹介となった.胸痛時の心電図検査では下壁誘導,V4-6誘導のST上昇を認め,ニトログリセリン舌下スプレーで症状と心電図所見は軽快した.冠動脈造影で異常は認めず,心臓MRIでも遅延造影で造影効果を認めなかったことより,冠攣縮性狭心症と診断した.小児の冠攣縮性狭心症は検査に限界があり,臨床上心筋炎との鑑別が難しく,冠攣縮性狭心症の診断ガイドラインのように診断,治療を進めることが難しいこともある.

  • 乃木田 正俊, 福永 英生, 池野 充, 細野 優, 若月 寿子, 松井 こと子, 原田 真菜, 古川 岳史, 高橋 健, 稀代 雅彦, 関 ...
    2021 年 37 巻 4 号 p. 312-317
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は14歳の女児で,繰り返す活動時の一過性意識障害(transient loss of consciousness: T-LOC)を主訴に来院した.脳波検査所見は右頭頂部から側頭部に棘徐波を認め,てんかん疑いでlamotrigineを開始したが改善がなく,さらなる精査を行った.心臓電気生理学的検査に異常はなかった.心臓CT検査にてinterarterial(壁内走行を伴わず大動脈と肺動脈の間を走行する)の右冠動脈起始異常を認めたが,運動負荷試験で心筋虚血を示す所見がなかった.脳波所見は非典型的所見であり,てんかん発作には稀な活動時のT-LOCが見られたことから,心原性失神とてんかんの鑑別が困難であり植込み型心臓モニタ(insertable cardiac monitor: ICM)の植込みを実施した.ICM植込み後にT-LOCを認めた際の記録では,不整脈はなく,けいれん発作を疑う筋電図の混入を認めた.この結果と発作時の様子を合わせて焦点性起始両側強直間代性発作(FBTCS)によるT-LOCと診断し,lacosamideの併用により症状は軽快した.鑑別が困難なT-LOCでは,小児であってもICMの活用が有効である.

  • 馬場 恵史, 阿部 忠朗, 塚田 正範, 小澤 淳一, 杉本 愛, 沼野 藤人, 白石 修一, 齋藤 昭彦
    2021 年 37 巻 4 号 p. 320-328
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    肺静脈閉塞を合併したFontan術後患者に対する有効な治療法はなく予後は不良である.今回我々はFontan術後に右肺静脈閉塞を来し,多量の胸水,浮腫,心房性不整脈が出現した急性心不全の3歳女児例に対して体肺側副血管と右肺動脈の塞栓後に開窓作成術を行った.体肺側副血管の塞栓は3回のセッションに分けて51本のコイルを使用した.右肺動脈塞栓は計5個のAmplatzer Vascular Plug(AVP)と計2本のコイルを用いて,手技時間は3時間程度で合併症なく完全閉塞できた.その後に開窓作成術を行い,中心静脈圧は閉塞術前の20 mmHgから7 mmHgへ低下した.手技に伴う合併症はなく,手技時間も短く施行し得た.しかし術後9日目に心タンポナーデを発症し死亡した.過去に肺静脈閉塞を合併したFontan術後症例に対して体肺側副血管と患側の肺動脈を完全に塞栓した報告はない.本治療は一時的に肺静脈閉塞を伴うFontan患者の循環動態を安定させた.

Editorial Comment
次世代育成シリーズ
feedback
Top