抄録
人体の骨格組織である骨・軟骨の分化形成において,副甲状腺ホルモン(PTH)および副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP),ならびにその受容体(PTH/PTHrP 受容体,以下PTH-R)は重要な役割を果たす。一方,PTH-R の遺伝子変異は,系統疾患の中でも高頻度を示す骨・軟骨異形成症を発症させることが知られており,PTH-R の点突然変異(PTH-RP132L)によって生じるBlomstrand 型軟骨異形成症では受容体にリガンドが結合しないとされている。そこで,野生型PTH-R およびPTH-RP132L 遺伝子発現ベクターを用い,野生型と変異型PTH-R の細胞内局在の違いと,それに関わる細胞内輸送異常の可能性について検討を行った。 その結果,PTH-RP132L タンパクは免疫電顕により細胞膜表面ではなく,小胞体などの細胞内小器官に蓄積,または周囲の細胞質に観察されること,さらにウエスタンブロットにより膜分画にわずかにしか検出されないことから,PTH-RP132L タンパクは正常な細胞膜輸送が行われないことが示唆された。従って,Blomstrand 型軟骨異形成症の骨格異常は,受容体の局在異常にも起因する可能性が推察され,さらにPTH-RP132L タンパクの細胞内輸送異常は,小胞体での品質管理機構による可能性が推測された。