抄録
歯科治療をストレスと感じる者は多い。特に,心身が未熟で様々な経験が少ない小児や拒否反応の強い障害者(児)は,成人と比べストレスの耐性は低い。ストレスによる免疫機能低下の機序について様々な研究も行われてきているが,自然免疫の影響については未だ不明である。本研究では,ストレス関連内分泌介在物質である副腎皮質ホルモンの合成薬,デキサメタゾン(以下Dex)が口腔粘膜上皮の自然免疫機構,特に病原微生物認識機構及び抗菌ペプチドであるヒトβ ディフェンシン(以下hBD)の発現に与える影響とそのメカニズムを明らかにすることを目的とした。ヒト正常培養角化細胞を用い,Toll-Like receptor(TLR)2 agonist およびTLR4 agonist を使用した。Dex を添加した時のhBD-1, -2 および-3 の発現変化を検討し,さらに細胞内情報伝達経路を明らかにするために,MAPK/ERK inhibitor によりhBD が抑制されるか否か検証した。Dex によりhBD-3 ペプチドの発現減少がみられ,Dex とTLR4 agonist の共添加時ではhBD-1, -2 のmRNA 発現減少がみられた。本研究により,Dex は病原微生物による刺激がある際に,自然免疫を担うhBD の発現を抑制する傾向にあり,それはMAPK/ERK pathway を介した発現調節であることが示唆された。