小児歯科学雑誌
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臨床
Dandy-Walker variantの患児に歯の形成不全症の合併が疑われた1例
増田 啓次中村 志保山口 登小笠原 貴子山座 治義西垣 奏一郎柳田 憲一廣藤 雄太野中 和明
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2014 年 52 巻 3 号 p. 440-447

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抄録
Dandy-Walker variant はDandy-Walker malformation の軽症型で,小脳虫部の発生異常と第四脳室の嚢胞状拡張を主な特徴とする。我々はDandy-Walker variant の患児に歯の形成不全症の合併が疑われた1 例を経験した。患児は初診時年齢10 歳5 か月の男児で,歯の実質欠損を伴わない6の根尖性歯周炎およびこれと関連する右側下顎骨周囲膿瘍の精査加療を目的に当科を紹介受診した。Dandy-Walker variant に合併する重度の精神発達遅滞のため診療に協力が得られず,精査加療は全身麻酔下にて行った。デンタルエックス線検査により6を含めた永久歯多数に細い歯根,希薄な象牙質および歯髄腔の拡大を認めたため,歯質の脆弱化をきたす何らかの歯の形成不全症が強く疑われた。しかし歯の色調・外観の異常,破折,著明な咬耗・摩耗はいずれも認めず確定診断には至らなかった。6は脆弱な歯質に生じた微細な亀裂から徐々に歯髄感染を起こし,根尖性歯周炎から膿瘍形成に至ったものと推定された。治療として感染根管処置,既製冠による歯冠修復および根尖掻爬を行った。その後,6にも同様の症状が出現したため,全身麻酔下にて感染根管処置,既製冠による歯冠修復および根尖掻爬を行った。同時に症状のない66については予防的に既製冠装着による歯冠保護を行った。現在のところ,これらの処置歯の経過は良好である。しかし,歯質の脆弱化が疑われる他の永久歯にも同様の歯髄感染が生じる可能性がある。今後も定期的な口腔衛生指導を行いながら注意深く経過観察する方針である。
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© 2014 日本小児歯科学会
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