抄録
エナメル質初期齲蝕のより有効な再石灰化方法の開発を目的として,再石灰化促進効果のあることが知られているリン酸化オリゴ糖カルシウム(POs-Ca)と,各種フッ化物の組み合わせによる効果を,定量的光誘導蛍光装置(QLF)とミネラル分析の常法である定量的マイクロラジオグラフィー(TMR)で評価した。牛歯エナメル質試料を2 週間脱灰させ,8 種類の再石灰化溶液に試料を各々37℃で1 週間再石灰化後,QLF にて再石灰化後の平均脱灰深度(ΔΔF),再石灰化後の平均脱灰量(ΔΔQ)および再石灰化後の脱灰歯面の面積(ΔWS area)を求めた。その後TMR にてミネラル喪失量(ΔZ)および脱灰深度(ld)による再石灰化率(ΔZREM 率,ldREM 率)を算出した。QLF によるΔΔF, ΔΔQ, ΔWS area と,TMR によるΔZREM 率のすべての結果において,対照群に対して有意に高い再石灰化を認めたのは,人工唾液にPOs-Ca と緑茶由来のフッ化物(1.2 ppmF)を配合したCPF 群のみであった。また,各種フッ化物の比較では有意差はなかったものの,CPF 群の再石灰化率が高い傾向にあった。