小児歯科学雑誌
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原著
乳歯列期における上唇小帯の形態と付着位置に関する調査研究
酒井 暢世鈴木 冴沙鈴木 彩花藤原 恵高原 梢森本 直美菊池 元宏朝田 芳信
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2017 年 55 巻 1 号 p. 44-50

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抄録

上唇小帯の形態やその推移を明らかにすることは,上唇小帯の形態および付着位置異常の発症を予測し,小帯異常が誘因となる口腔疾病の予防や治療への早期対応が可能となる点で臨床的な意義が大きい。そこで,本学歯学部附属病院小児歯科外来を受診した0 歳から6 歳の健常男女児174 名を対象とし,上唇小帯の形態と付着位置をもとにした野坂らの分類を行った。型別の出現数は男女ともに正常型の出現数が最も多く,正常型以外の出現数は男児はⅡ型が,女児はⅠ型とⅡ型が多かった。また,型別の出現率は男女ともに正常型が最も高かったものの,その割合に男女差は認めず,男女合算の型別出現率は正常型が69.5%,次いでⅡ型の10.9%であった。年齢別およびタイプ別出現数は3 歳児の正常型および1 歳児の異常型が有意に多く,3 歳児の異常型および1 歳児の正常型が有意に少なかった。 この1 歳から3 歳までの時期は顔面頭蓋の高さの発育の高い時期と一致していた。上顎歯槽骨の高さは骨の添加により増加するとされており,上唇小帯の付着部位が低位に移動したことが,今回の結果の理由であることが示唆された。また,1 歳児の正常型が有意に少なく,3 歳児の正常型が有意に多かった結果をふまえると,0~2 歳に上唇小帯付着位置や形態が異常と判定されても,哺乳や摂食などの健康にかかわる問題が生じない限り,経過観察が妥当であることが示唆された。

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© 2017 日本小児歯科学会
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