小児歯科学雑誌
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原著
乳歯外傷予防のための事故事例調査
園本 美惠河合 咲希永田 幸子池田 まりあ人見 さよ子西村 貴子篠永 ゆかり阿部 洋子原田 京子有田 憲司
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2018 年 56 巻 1 号 p. 50-55

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抄録

本研究は乳歯外傷の予防に利用することを目的として,大学病院小児歯科における10年間の0~5歳の乳歯外傷患児の診療録を用いて事故事例調査を行い,年齢別に受傷数,受傷場所,受傷原因および高頻度類似事例について集計・分析を行い,以下の結果を得た。

1.0歳~5歳の新患患児3238人のうち乳歯外傷患児は312人(9.6%)で,1歳児が最も多く,次いで2歳児であった。

2.受傷場所は,0~2歳児は,64~78%が家庭内であったが,3・4歳児は保育所・幼稚園,公園,路上など様々な場所で受傷しており,5歳児は公園や屋内施設が多かった。

3.家庭内では,居間・台所・寝室での受傷が最も多く,1歳と2歳児では約40%が同所で受傷していた。そのうち家具との衝突が最も多く,特にテーブルが多かった。階段での受傷は7.4%で,1歳児が過半数を占めていた。保育所・幼稚園でも屋内が80%と突出して多かった。公園での受傷は,1歳以降増齢的に増加し,遊具が多く,その6割はすべり台であった。

4.受傷原因は,全ての年齢で転倒が最も多かった。転落は0歳児と5歳児に多く,衝突は1~4歳児に多かった。

5.家庭内で特定の類似した外傷事例が頻発していることが明らかとなった。

以上より,乳幼児期の歯の外傷は児の運動機能をはじめとした身体発達につれて受傷に特徴があることが認められ,特に発生頻度の高い年少児をもつ保護者に対して歯の外傷予防に関する啓発活動の必要性が示唆された。

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© 2018 日本小児歯科学会
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