小児歯科学雑誌
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臨床
乳歯根尖性歯周炎に起因する歯性上顎洞炎の1例
荒井 亮有泉 由紀子秋元 佐和子高野 紗弥佳辻野 啓一郎新谷 誠康
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2018 年 56 巻 3 号 p. 390-395

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抄録

歯性上顎洞炎は根尖部の炎症が上顎洞内に波及することにより起こる歯性感染症である。しかし乳歯では上顎洞との間に後継永久歯胚が存在するため,乳歯が歯性上顎洞炎の原因歯となることは稀である。今回,我々は上顎第二乳臼歯根尖性歯周炎に起因した歯性上顎洞炎を経験したので報告する。 患児は6 歳5 か月の女児で,左側頰部圧痛および上顎左側乳臼歯部歯肉腫脹を主訴に来院した。CT 画像から左側上顎洞底粘膜の肥厚を認め,第二乳臼歯近心頰側根周囲の上顎洞底部骨の連続性が断たれている所見を認めた。上顎左側第二乳臼歯根尖性歯周炎に起因する左側歯性上顎洞炎と診断し,消炎処置後,原因歯の抜去を行なった。保隙装置を装着し,経過観察を行ったところ,1 年11 か月後に上顎左側第二小臼歯が歯列内に萌出した。 症例の把握のため,初診時と1 年2 か月経過時に撮影されたCT 画像の比較を行なった。CT 画像を比較分析するため基準平面を設定した。前鼻棘(ANS),後鼻棘(PNS),切歯孔中央から矢状基準面を設定した。ANS とPNS を含み矢状基準面に垂直な平面を水平基準面,2 つの基準面に垂直でANS を含む平面を前額基準面とした。さらにANS を基準点(O)とした。この基準から,上顎洞底粘膜の変化と後継永久歯胚の骨内萌出の様相を分析したところ,粘膜肥厚の消退と後継永久歯胚位置の改善を定量的に観察することができた。CT 画像の比較に我々の設定した基準平面は有用であったと考えられる。

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© 2018 日本小児歯科学会
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