小児歯科学雑誌
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臨床
著しい局所的骨増生を伴った下顎切歯埋伏の1例
楠田 理奈高森 一乗根本 なつき木村 紗百合外木 守雄白川 哲夫
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キーワード: 埋伏歯, 萌出障害, 骨増生, 小児
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2018 年 56 巻 3 号 p. 396-402

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抄録

乳歯の晩期残存や永久歯の萌出障害は健全な永久歯列育成の障害となるがその原因は多様である。今回,我々は下顎左側前歯部に乳歯の晩期残存と著しい骨増生を伴った後継永久歯の埋伏症例を経験した。 患児は初診時8 歳0 か月で,下顎左側乳中切歯,乳側切歯が残存しており動揺は認められなかった。またそれらの歯の歯槽部に骨様硬の膨隆が認められた。エックス線所見で両乳切歯の歯根はほとんど吸収されておらず,埋伏している左側中切歯および側切歯は遠心に傾斜し,歯冠を囲む嚢胞様の透過像を認めた。乳歯晩期残存,含歯性嚢胞の臨床診断のもと局所麻酔下で通法に従って乳歯抜歯ならびに開窓術を行った。処置 1 か月後に左側中切歯の萌出を認め,7 か月後に左側側切歯の萌出を認めたが,歯槽部の膨隆は明らかに増大していた。萌出した下顎左側両切歯の咬合誘導も検討したが,保護者の強い希望により下顎左側中切歯ならびに側切歯の抜去と骨整形を行った。病理組織学的診断は「反応性骨増生」であり,歯槽部の膨隆や永久切歯埋伏の原因は明確ではなかった。 現在,処置後2 年を経過しているが,処置部に骨増生の再発は認められず経過は良好である。

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© 2018 日本小児歯科学会
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