小児歯科学雑誌
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症例報告
上顎両側犬歯の埋伏および上顎両側大臼歯部の埋伏過剰歯を併発した歯肉線維腫症の1例
五十嵐 悠川島 翼船津 敬弘
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2022 年 60 巻 2 号 p. 74-81

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抄録

歯肉線維腫症は,主に小児期に発症し緩徐に進行する歯肉増殖を特徴とするまれな疾患である。今回,歯肉線維腫症と上顎両側犬歯の埋伏および上顎両側大臼歯部の埋伏過剰歯を併発した1例を経験したため報告する。

患者は6歳6か月男児。近医より永久歯の萌出遅延を指摘されたことにより来院した。口腔内所見は上顎歯肉が著しく腫脹しており,歯冠は臨床的歯冠長が得られず一部がわずかに萌出していた。家族歴として両親および祖父母には認められないが,弟には同様の症状がみられるため,遺伝性歯肉線維腫症と診断した。8歳8か月時のパノラマエックス線画像より,上顎両側犬歯部では歯胚を含む境界明瞭な透過像を認め,上顎両側第二大臼歯部に過剰歯の歯胚を認めた。9歳8か月時に歯肉切除術および上顎両側犬歯部開窓術,10歳6か月時に過剰歯抜去術を全身麻酔下にて行った。10歳11か月となる現在まで定期的に口腔清掃指導を行い,良好なプラークコントロールが保たれており歯肉増殖の再発は認められない。今後は,矯正治療の開始時期に再発が高くなることが考えられ,長期的な経過観察と継続的な口腔衛生管理が重要である。

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© 2022 日本小児歯科学会
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