2024 年 62 巻 3 号 p. 77-86
乳歯列期の歯列弓幅径と長径,ならびに不正咬合の頻度を明らかにする目的で,2013年から2018年に保育所に在籍した3歳0か月から6歳6か月の小児1,702名の歯列模型を分析して以下の結果を得た。
1.歯列弓幅径では,計測した4箇所(乳犬歯咬頭頂間,乳犬歯舌側歯頸部最下点間,第一乳臼歯間,第二乳臼歯間)について,上下顎ともほぼ全ての比較で女児よりも男児が有意に大きかった。
2.日本小児歯科学会による「3歳児歯科健康診断における不正咬合の判定基準」に基づく不正咬合の頻度は,叢生が全ての年齢で最も割合が高く,次いで反対咬合の割合が高かった。増齢とともに上顎前突と開咬の頻度は低下し,過蓋咬合の頻度は上昇傾向を示した。
3.叢生歯列と不正咬合の所見のない正常歯列で歯列弓幅径を比較したところ,男児,女児ともに正常歯列の幅径が複数の計測箇所で有意に大きかった。歯列弓長径は,上顎は男女とも両歯列間に有意差はなく,下顎は男女を合わせた計測値が正常歯列で有意に大きかった。
4.乳中切歯と乳側切歯の歯冠幅径は,上下顎とも正常歯列に比べ叢生歯列で有意に大きかった。また前歯部の被蓋は,3歳,4歳および5歳において正常歯列に比べて叢生歯列で有意に深かった。
以上により最近の小児の乳歯列弓の大きさと咬合の特徴が明らかとなり,歯列弓幅径と被蓋の深さ,および歯冠幅径が叢生に関係する可能性が示された。