2024 年 62 巻 3 号 p. 94-103
小児齲蝕とCandida albicansおよび母子感染との関連は国内外を問わず報告されている。本研究では,一口腔の現状を把握できる「齲蝕重症度」で患児を分類し,日本人母子のC. albicansの保有状況と,養育者が関与し得る要因(食事,習慣,母親の齲蝕罹患経験)との関連を評価した。対象は乳歯列完成期から混合歯列期の患児(男児50名,女児30名,平均年齢5歳1か月)とその母親の計80組とした。その結果,C. albicans検出児の7割が齲蝕重症度分類の重度に該当し,齲蝕重症度が増すほど,母子の双方でC. albicansとStreptococcus mutansの菌数が増加していた。また6か月以内に齲蝕を再発した小児全員がC. albicansに感染していた。重度該当児はC. albicansの菌数が多く,母親のDMF歯数が多い傾向がみられた。C. albicansの遺伝子型は母子で同様の分布を示し,A型が約6割,D型が約2割を占めた。
このように,C. albicansはS. mutansとともに小児齲蝕の発症,重症化および再発に関与する可能性があり,母親の微生物プロファイルや齲蝕罹患状態との関連が認められた。以上より,小児齲蝕の微生物学的リスク要因としてC. albicansも考慮に入れたうえで,母親を含む養育者を対象とした健康教育や口腔ケアに改めて取り組む重要性が示唆された。