抄録
18名の小児について,後屈時における緊張性頸反射時の咀嚼筋筋電図,模型分析,セファロ分析を行い,乳歯列期の咬合について検討した結果,次のような結論を得た。
1) 1 8 名中9 名について左右咀嚼筋の活動電位に差がみとめられ( G r o u p II) , 残り9 名については差がみとめられなかった(Group I)。筋群では側頭筋に筋緊張充進が出現しやすい傾向にあった。
2)活動電位の非均衡と,模型分析におけるover bite,over jet,乳犬歯関係,咬耗状態,歯列弓長径の相対的割合に高い相関がみられ,活動電位に非均衡のみられたGroup II,の咬合は深く,上下顎歯列弓長径の差も大きかった。
3)セファロ分析ではConvexity,A-Bplane,A-B differenceの上下顎歯槽の前後的差がみられ,また下顎骨におけるGn-Cd間,Cd-Go間の長さにおいても差がみられた。つまりGroup IIの下顎骨はGroup Iのそれよりも小さかった。
4)以上のことより,乳歯列期の望ましい咬合関係は,over biteは0.87±0.76mm,over jetは1.73±0.48mm,乳犬歯被蓋は1/2以下で,乳犬歯咬合は左右対称的であり,咬耗についても生理的範囲でみられる咬合が機能的にみて望ましい咬合関係であると考えられた。