抄録
著者らは萌出方向に存在する歯が原因と思われる下顎右側第2乳臼歯の埋伏した5歳男児の症例に遭遇した.
全身的及び歯科的に問題となる既往はない.下顎右側第2乳臼歯の未萌出以外,特に異常は認められない.X線写真から,下顎右側第2乳臼歯の歯冠上に歯牙様透過像が認められる.又,下顎右側第2小臼歯の歯胚は認められない.
当該部歯肉を開窓し,歯冠上の歯を摘出した.Direct Bonding Systemによりbutton,bracketを装着し,arch wireを用いて下顎右側第2乳臼歯の萌出誘導を行った.
摘出した歯の所見としては,円錐歯様形態を呈し,歯根は形成されていない.又 Retziusの発育条は著明に認められるが,新産線は認められない.
本症例での歯冠上の歯を過剰歯と考えるより,下顎右側第2小臼歯の原基が第2乳臼歯歯冠の咬合而側に達した時,何らかの原因で残留したものとする方が自然で,その結果第2乳臼歯が萌出を障害され埋伏したものと考える.