小児歯科学雑誌
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正中癒合歯の一症例
藤田 日出男大森 郁朗
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1982 年 20 巻 3 号 p. 472-478

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抄録

癒合歯に関する症例報告は数多くみられるが,上顎正中部の癒合歯の報告は非常に少ない.著者らは鶴見大学歯学部付属病院小児歯科を訪れた5歳3ヵ月の女児にみられた,乳歯およびその後継永久歯の上顎正中癒合歯の一例について臨床的および組織学的観察を行い,さらにそれについての発生学的考察を加えた.
今回遭遇した上顎正中癒合歯は肉眼的観察より,乳歯,永久歯ともに癒合部の痕跡を思わせる所見は得られず,近遠心の判別しない1本の正常歯のように思われた.
また,組織学的観察においても,乳歯,永久歯ともに癒合歯を思わせる所見は得られず,乳歯において,歯髄腔天蓋部に咬耗によると思われる著明な第二象牙質の形成がみられる他は,特に異常は認められなかった.
発生学的にみて,上顎突起の圧迫による2個の歯胚の癒合により生じたと考えることもでぎるが,発生の初期から1個の歯胚形成によるものという考え方も示唆された.鼻疾患との関連も発生学的に示唆された.
臨床的な問題として,審美性の改善にも大きな関心を払う必要があり,現在そのような考えに基づき咬合調整を行っている.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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