小児歯科学雑誌
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(NH4)2MoO2F4の耐酸性および人工白斑形成に及ぼす影響
落合 伸行平川 昌子楽木 正実堤 脩郎祖父江 鎮雄
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キーワード: 耐酸性, 人工白斑形成
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1982 年 20 巻 3 号 p. 479-488

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抄録

モリブデンは,多くの疫学的研究や動物実験の結果,抗齲蝕効果を有すると考えられている.そこで我々は, フッ素とモリブデンの両者を含有する新しいフッ化物(NH4)2MoO2F4を開発した.本薬剤の齲蝕抑制効果は,ラット実験齲蝕系を用いて明らかにしてきたが, 歯質に及ぼす影響がいかなる要因によるのかは, 不明である.今回は, (NH4)2MoO2F4の健全エナメル質に及ぼす影響を耐酸性の変化と人工白斑形成の抑制の両面から,フッ素とモリブデン濃度およびpHが同一のNH4Fと(NH4)6Mo7O24・4H2Oとを用いて比較検討した.その結果,(NH4)2MoO2F4,NH4Fおよび(NH4)6Mo7O24・4H2Oのすべてに耐酸性の向上作用と人工白斑形成の抑制作用が認められ, 中でも(NH4)2MoO2F4の作用が最も著明であった.以上の結果より,モリブデンにも耐酸性の向上作用および人工白斑形成の抑制作用のある事が判明し,(NH4)2MoO2F4の歯質に及ぼす影響はフッ素のみならずモリブデンも関与していることが示唆された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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