小児歯科学雑誌
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下顎永久前歯萌出過程のPanoramic Tomographyによる観察
鈴木 康生
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1983 年 21 巻 1 号 p. 24-45

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抄録

下顎永久前歯の萌出過程の様相をパノラマ断層X線写真から総合的に観察した.
資料は,乳歯列期から混合歯列期までの小児85名からほぼ1年ごとに治療上の必要から撮影されたパノラマ断層X線写真である.その結果次のような結論を得た.
1)歯胚形成量ならびに萌出率の年齢的変化は,男女とも永久中切歯,側切歯,犬歯の各歯種で暦齢を独立変数とした3次の回帰方程式で表わされるような変化を示した.このことから,下顎永久前歯ではその成長発育は時間的経過を追って一様に変化するものではないことが示唆された.また,中切歯と側切歯とは成長時期に約1年の差があるにもかかわらず両者の3次曲線はよく似た形を示した.
2)下顎4切歯の歯胚の重なり度は,暦齢80ヵ月頃から漸次解消する傾向にあったこの重なりの解消には側切歯の動きがより関与していることがうかがわれた.
3)歯軸傾斜角度は,中切歯,側切歯とも増齢に伴う大きな変化はみられなかった.
4)先行乳歯根の吸収は,乳中切歯,乳犬歯ではそれぞれ後継永久歯の萌出とほぼ同時的に吸収が進むのに対し,乳側切歯では根吸収がやや遅れる傾向にあった.
5)歯胚の捻転は,永久中切歯では出現頻度が少ない.側切歯では顎骨内で40~50%のものにみられたが,萌出に伴い漸次解消する傾向にあった.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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