抄録
我々は,新生児の下顎乳中切歯相当部歯肉にAAの先天性歯と腫瘤の生じた症例を経験した。先天性歯抜去後の9ヵ月を経ても腫瘤が残存し,しかも硬組織の一部露出をみたので切除し,病理組織学的に検索した。
X線所見では,腫瘤部に米粒大及び小豆大の境界明瞭な硬組織らしき不透過像を認めた。
病理組織学的には,腫瘤は毛細血管の豊富な線維性結合組織で多数の円形細胞浸潤を認め,骨様象牙質と思われる硬組織に層板状構造,細胞封入,及び細管構造を認めた。
本症例はAAの先天性歯抜去後に残存した歯乳頭あるいは歯髄に連続する下方の組織内に象牙芽細胞の分化が起こり,骨様象牙質の形成が行なわれたのではないかと思われた。