小児歯科学雑誌
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既製乳歯金属冠成分のヒト線維芽細胞への親和性に関する研究
加我 正行青森 継充小沢 光浩渡辺 郁也及川 清
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1983 年 21 巻 2 号 p. 179-185

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抄録
既製乳歯金属冠は小児歯科臨床に非常に多く使用されている。これら乳歯冠の生体に対する安全性を組織培養によって検索した。
実験試料には2種類の既製乳歯金属冠A,Bと純度99.9%のNiとCuを用いた。試料の形状は6×6×0.2mm3の薄片板状とし,オートクレーブ中にて120℃,30分間加熱滅菌して実験に供した。組織培養に用いる培養液はEagleのMEM+L-glutamine+10%bovine calf serumを使用した。
ヒト歯肉由来の継代培養した線維芽細胞を用いて,細胞数が1×105cells/mlの懸濁液を作製した。これを培養皿に5mlずつ分注し,その中央に試験片試料を静置し,炭酸ガスインキュベーター内で培養した。試験片周囲の細胞の形態観察および細胞数の算定は1日目,2日目,4日目,7日目に実施した。
その結果,金属の存在における線維芽細胞の消長は,Cuでは経時的に細胞の増殖がみられたが,4日目では生活細胞の存在はほとんどみられなかった。Niでは経時的に細胞の増殖がみられたが,細胞数は対照群に比べて少なく,危険率1%で有意に差があった。乳歯金属冠A,Bは共に対照群とほぼ同様に細胞が増殖し,有意な差は認められなかった。形態観察はCuでは金属周囲の細胞の細胞核の変性ならびに萎縮がみられた。Ni周囲の細胞は正常細胞に比べ細胞の萎縮がみられた。乳歯金属冠A,Bでは金属の境界に細胞の親和性がみられた。以上の結果より既製乳歯金属冠の生体に対する安全性が示唆された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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