小児歯科学雑誌
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先天性エプーリスの2症例
田中 英一保津 恭子村上 美保大野 紘八郎
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1984 年 22 巻 2 号 p. 560-570

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抄録

先天性エプーリスは,新生児の歯肉に生じた良性の限局した腫瘤の臨床的名称であり,その発現頻度は比較的稀である.
今回我々は,歯肉の腫瘤を主訴に鶴見大学歯学部附属病院小児歯科を訪れ,臨床的に先天性エプーリスと診断された2症例を経験したので,その臨床所見と病理組織学的所見を報告する.
症例1は,0歳6ヵ月の女児で,下顎前歯部歯槽部歯肉に小指頭大の腫瘤を認め,また,何らかの機械的刺激により,腫瘤に内出血が生じたためと思われる色調の変化がみられた.処置として,腫瘤の切除を行い,経過は良好であった.病理組織学的には未梢血管拡張性線維性エプーリスに類似の組織像であった.
症例2は,0歳9ヵ月の男児で,上顎乳中切歯部口蓋粘膜に直径約7.0mmの腫瘤を認めた.腫瘤表面には潰瘍形成がみられ,腫瘤によるAの萌出障害もみられた.処置として,同部位の埋伏過剰歯とともに,腫瘤を一塊として摘出し,経過は良好であった.病理組織学的には,肉芽腫性エプーリスに類似の組織像であった.
発生由来については,症例1で,X線写真所見で形成不全のみられた乳前歯,そして症例2で,腫瘤に近接して存在していた過剰歯との関連が臨床的に考えられたが,組織学的には明確にすることはできなかった.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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