小児歯科学雑誌
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9カ月の乳児に生じたFibrous Hyperplasiaの一症例
河野 美砂子赤沼 克枝野田 忠鈴木 誠
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1986 年 24 巻 4 号 p. 787-792

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抄録

乳児の口腔粘膜に発現する良性腫瘍状病変として先天性エプーリスが知られるが,それ以外の報告は著者らの調べた範囲では少ない。
著者らは,新潟大学歯学部小児歯科外来を受診した生後9カ月の男児の上顎左側切歯乳頭付近の口蓋粘膜に生じた腫瘤を経験したので報告する。
患児が生後11カ月の時に腫瘤をfibromaと臨床診断し切除した。病理組織学的には腫瘍様配列を示さない線維性組織が主体で,一部にfibromaを思わせるfibroblastのかなり密な増殖がみられたが,毛細血管の増生および炎症性細胞浸潤が腫瘤全体にみられたことより,炎症過程を経た修復性ないし反応性の線維組織の過形成,すなわちfibrous hyperplasiaと診断された。
誘因は,十分明らかではないが患児が示指を割合頻繁に口に入れていたことが考えられる。また,上顎正中切歯部に過剰歯胚が2本認められたが,腫瘤と過剰歯との関係はないと思われた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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