抄録
この研究の目的は咬合の不正,顎顔面形態そして臨床所見から思春期における顎関節症の原因としての咬合の不正の役割を明らかにすることであった。
対象は鹿児島大学歯学部附属病院小児歯科外来に来院した10歳から20歳までの顎関節症患者40名であった。研究用歯列模型,頭部X線正貌,側貌規格写真ならびに規格化された正貌写真の研究から次のような結果を得た。
1)顎関節症患者は次の様な特徴的顎顔面形態を有していた。
下顎枝ならびに体は対象群と比較し小さく,短かった。特にGonial Angleにおいて顎関節症群は対象群に比べ大きかった。
2)顎関節症群の下顎の縮少は下後方であった。
3)顎関節症群における歯と歯槽基底の不調和値と歯列不正度は対象群よりも高値を示した。この所見は顎関節症群における下顎の縮少によることが示唆された。
4)上顎における歯と歯槽基底の不調和は対象群と比較した場合顎関節症群に存在しなかった。しかし上顎の歯列不正度は高く,この研究のすべての結果から,この所見は小さな下顎歯列に対して上顎歯列の順応による結果だろうことが推察された。