小児歯科学雑誌
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脱灰アパタイトの再石灰化過程
奥田 令以
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1987 年 25 巻 2 号 p. 353-366

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抄録

酢酸および乳酸脱灰溶液中でアパタイト(HAp)結晶の脱灰過程を研究し,さらにこれら有機酸で部分脱灰したHApを種々の濃度のリン酸カルシウム溶液中で再石灰化させ,個々の結晶から見た再石灰化がどの様に進行するかを,F-の有無ならびに再石灰化溶液の飽和度を考慮して検討した。
HApの脱灰量はpH4.0以下では酢酸中に比べ乳酸中の方が多かったが,脱灰部位は有機酸の種類に関係なくHAp結晶の基底面および柱面に見られた。
再石灰化過程では,基底面からの寄与が大きく,特に再石灰化初期においては溶液の飽和度およびF-の有無に関係なく基底面から優先的に再石灰化していた。OCPが生成し得る溶液中では,10μM程度のF-が存在するとOCPの生成を抑制し再石灰化は遅延することが明らかとなった。このとき,新たに成長したHApもしくはFApは脱灰HAp表面に無配向に析出成長していた。これに反し、OCPが関与できない溶液中では,F-が存在すると再石灰は促進されていた。また,新たなHApもしくはFApは脱灰HApの基底面から析出し,その後もc軸に平行に再石灰化が進行していた。
以上の結果により,飽和度の違いによって再石灰化過程が異なることが示唆され,歯質エナメル質の再石灰化部位の配向性を議論する上で溶液組成およびF-が極めて重要な役割を果していることが示唆された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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