抄録
東北大学歯学部附属病院口蓋裂診療班において,乳歯列期より咬合管理している唇顎口蓋裂児で,他に奇形を合併していない85名(男児49名,女児36名)を対象に,乳歯歯数と永久歯歯胚数の異常発現状況及び両者の関連性について,明確にすることを目的として調査を行った。その結果,
1)唇顎口蓋裂児では歯数異常の発現率が乳歯30.6%,永久歯71.8%と,特に永久歯で顕著であった。
2)上顎での歯数異常を種類別に見ると,乳歯では欠如14.1%,過剰10.6%,癒合1.2%,また永久歯では欠如64.7%,過剰5.9%を認めた。
3)上顎での欠如の発現部位は,乳歯では唇顎裂・唇顎口蓋裂ともに前歯部に,口蓋裂では臼歯部にみられ,また永久歯では唇顎裂で前歯部,口蓋裂で臼歯部に,唇顎口蓋裂では前歯部と臼歯部の両方にみられ,裂型による発現の違いが認められた。
4)歯数異常は乳歯ないしは永久歯のいずれかに単独に発現する例が多いが,顎破裂症例の患側では破裂の重症化に伴い,乳歯・永久歯の両方に異常を示すものが多くみられた。
5)顎破裂の部位と異常発現の関係は,A▼BCが最も多く73.8%あり,A▼C 11.9%,AB▼B′8.3%で,AB▼Cは著しく少なく4.8%であった。