小児歯科学雑誌
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齲蝕原性細菌Streptococcus mutansの産生するバクテリオシン(ミュータシン)の蝕抑制作用に関する研究齲
2.ミュータシンの抗菌作用を妨げる因子について
安福 美昭
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1987 年 25 巻 2 号 p. 395-403

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抄録
Streptococcus mutans C3603株(血清型c)が産生するバクテリオシン(ミュータシン)の齲蝕抑制効果を,ラット実験齲蝕系を用いて調べたところ,in vitroでの強力な抗菌作用から予期される程には顕著ではなかった。即ち,このミュータシンC3603の抗菌作用の発現が,ラット口腔内において何等かの機序で阻害されたと考えられた。そこでその原因を究明するため,in vitroにおいて種々の条件下でその抗菌作用を調べた。その結果,ミュータシンC3603は,スクロースを含まない培地で培養した指示菌(S.mutans)に対しては著明な抗菌作用を示すものの,スクロースを含む培地で培養した場合にはその作用が著明に阻害された。しかし,このミュータシンは,S.mutans が産生する菌体外多糖に対して特異的な吸着を示さなかった。一方,スクロースやグルコースの存在下で菌体外多糖を産生するStreptococcus mutansActinomyces viscosusはこのミュータシンに対して,S.mutans の場合と同様に,菌体外多糖の産生による耐性を示した。そこで,スクロースとデキストラナーゼとを同時に添加した培地で培養したS.mutansを指示菌としたときには,グルコース培養した場合と同様の強い抗菌作用が認められた。以上の結果は,スクロースから産生される菌体外多糖がS.mutans菌体表面を覆うことによってミュータシンが菌体表面に到達できず,その結果,その抗菌作用の発現が阻害されたものと考察された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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