小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
フッ素含有コーティング剤の白斑部再石灰化効果
徐 成徳
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 25 巻 2 号 p. 404-419

詳細
抄録

小児歯科臨床上頻繁に遭遇するエナメル質白斑(表層下脱灰)は,切削充填することなく人為的に再石灰化を促進し,表層下脱灰歯質をもとの状態に回復することが望まれている。
そこで,白斑部の再石灰化を促進させるために微量なフッ素を含有させた歯質接着性コーティング剤を新しく試作した。このコーティング剤は,エタノールを溶媒とした適度な親水性を有するポリメタアクリル酸エステルの共重合体を基剤としており,エナメル質に接着性を示し,再石灰化溶液内で持続的に微量なフッ素イオンを溶出するものである。
本実験では,コーティング剤の白斑部に対する効果を検討するため,定性及び定量的な基礎実験と臨床試験を行った。
その結果,基礎実験から10ppm F-含有コーティング剤を適用することにより,白斑部にフッ素化アパタイトを生成し,この部の結晶性と耐酸性の向上が認められた。臨床試験においても,10 ppm F-含有コーティング剤の白斑部改善効果が有意に認められた。
以上の結果から,10 ppm F-含有コーティング剤は,白斑部に対して齲蝕進行抑制と再石灰化促進効果を有する有望な薬剤であることが認められた。

著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top