小児歯科学雑誌
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外傷が影響したと思われる永久歯歯冠形態異常の1例
山本 益枝中島 正人三宅 雄次郎信家 弘士秋山 育也三浦 一生長坂 信夫
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1987 年 25 巻 2 号 p. 477-487

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抄録

乳歯が外傷を受けた場合,その後継永久歯に現れる発育障害については,臨床的疫学的,実験的報告が数多くなされている。我々は,本学小児歯科を受診した8歳10カ月の男児の上顎右側前歯部に歯冠形態異常を認めた。患児は,1歳6カ月頃,上顎右側乳中切歯が打撲により陥入し,即日抜歯処置を受けている。4歳7カ月の時,急性リンパ性白血病(A.L.L.)を発病したが,歯牙の障害は,上顎右側前歯部に限局しているため,乳歯外傷に起因するものと考えた。
上顎右側中切歯は,歯頸側1/2はエナメル質に被覆されているが,切端側1/2は遠心隅角部にエナメル質を認めるだけで黄白色の象牙質が露出しており,探針により擦過痛を認めた。X線所見でも同部位のエナメル質欠如が認められるため,エナメル質形成不全歯と診断した。
上顎右側側切歯は,歯冠中央から切端側にかけて黄色を帯びた硬組織が歯冠周囲をとりまいていた。硬組織の表面は粗造感があり,その中に周囲よりもやや白く光沢のある部位が,散在していた。審美性の回復のため削除した硬組織を病理組織学的検索をすると,主体は不規則な細管走向を示す象牙質であることが判明した。島状のエナメル質も認められ,一部セメント質の存在を疑わせる所見も認められた。以上の所見から側切歯の歯冠形態異常は,Andreasenらの言うオドントーマ様異形成歯に該当するのではないかと考えた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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