小児歯科学雑誌
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乳歯の外傷に関する臨床的研究
第3報 後継永久歯へ与える影響
石川 雅章佐藤 公子宮新 美智世
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1990 年 28 巻 2 号 p. 397-406

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抄録
乳歯外傷の後継永久歯に与える影響を探る目的で,受傷後も定期的なリコールに応じ,後継永久歯の萌出をみた66名126歯を調査したところ以下のような所見を得た.
1)後継永久歯の萌出,歯冠,歯根および歯髄のいずれかになんらかの異常を認めたものは72歯となった.このうち歯冠の形成,石灰化への影響が最も多く,白斑は55歯,黄斑は4歯,減形成は11歯に観察された.
2)萌出時期が反対側より1年半遅れた上顎中切歯が1歯,捻転が2歯にみられた.歯根については3歯に屈曲が,形成停止が1歯に認められた.歯髄の石灰化を疑わせるものが2歯存在した.
3)受傷時年齢が低いほど,後継永久歯歯冠へ影響を及ぼす割合および重症度が高くなる傾向が窺えた.後継歯に減形成と黄斑が観察された例での受傷時年齢は限定されていた.
4)初診時診断からは,歯周組織損傷の重症度とともに,乳歯の移動方向などが後継歯歯冠の形成や石灰化へ影響を与えうると推察された.
5)処置別では,観察群,抜歯群で減形成が比較的多く観察された.整復固定群では,黄斑と中等度以上の白斑の出現率が固定群より多かった.
6)初診直後または経過観察中に歯内療法を受けた後順調に経過した群では,軽度の白斑しか観察されなかったが,歯内療法後抜歯にいたった群では,歯内療法を受けずに抜歯された群よりも白斑の出現する率が高かった.
7)白斑の発現位置については,上下顎とも切縁側1/3に頻発していた.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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