抄録
第一大臼歯の異所萌出とは第一大臼歯が第二乳臼歯の遠心に正常に萌出せずに第二乳臼歯の歯根を異常に吸収する萌出をさすが,その治療法には多くの報告がある.今回,我々は上顎第一大臼歯の異所萌出において第二乳臼歯の著しい動揺を示した症例に対して,第一乳臼歯を固定源とする新しい装置を考案し治療を行い,良好な結果を得たので報告する.
患児は8歳6ヵ月の男児で上顎右側第一大臼歯が異所萌出し,第二乳臼歯に軽度の打診痛を認め,また動揺の程度も2度を示していた.装置は乳歯冠・STミニロック・主線・補助弾線からなり,第一乳臼歯を固定源として補助弾線の弾性により第一大臼歯の誘導を行った.主線および補助弾線は第一大臼歯の移動と萌出に従って適宜調整を行った.およそ4ヵ月経過して第一大臼歯のholdされた状態が改善され,第二乳臼歯の動揺もほぼ生理的な範囲に回復した.さらに2ヵ月経過した後には第一大臼歯をほぼ正常な位置まで誘導することができた.