小児歯科学雑誌
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小児の歯科診療時の協力性に関する研究
第4報 小児の歯科治療前および治療中の身体行動および情動反応と治療に対する適応性との関連
中川 弘原田 桂子鎌田 浩二宮本 幸子有田 憲司西野 瑞穂
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1990 年 28 巻 4 号 p. 984-995

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抄録

小児の歯科治療中の適応性を予測するのに,治療開始までのどの時点の小児の様子を評価することが最も有効であるかを知る目的で,3歳から6歳までの小児84名について,待ち合い室から診療台に仰臥し,治療を開始するまでの小児の様子と治療中の適応性との間の関連を分析した.また,治療適応児と不適応児それぞれの特徴を明確にする目的で,前記84名の中の適応児13名,不適応児13名について,治療中の小児の身体行動,小児の言語的反応および歯科医師の小児への話しかけについて調査,分析した.得られた結果は次のとおりであった.
1)待ち合い室から診療台に仰臥するまでの4場面20項目のうち12項目(待ち合い室での他人とのかかわり,受付での付き添い依存度および情緒安定度,診療台までの態度,歩き方,付き添い依存度および情緒安定度,診療台への上がり方,上がった後の様子,医師との応答,付き添い依存度および情緒安定度)に,治療に対する適応性と有意な関連が認められた.
2)治療中の小児の身体行動を,リラックスしているものから激しい拒否の運動まで5段階に評価し,各段階を1点から5点に評点化し分析したところ,不適応群は適応群に比べ,ブラッシング,表面麻酔,浸潤麻酔,ラバーダム装着,エアージェットによる形成,電気エンジンによる形成および充填処置の全ての処置で高い評点を示した.
3)適応群,不適応群ともブラッシング,表面麻酔,浸潤麻酔と進むに従って身体行動の評点が高くなっていくが,適応群では浸潤麻酔をピークとして以後評点は徐々に下がった.これに対し不適応群では浸潤麻酔後も変化なく高い評点を持続した.
4)不適応群では,適応群に比べ言語的反応の回数が多く,浸潤麻酔までは「発話」が多く認められ,それ以後は「痛みや不快の表明」,「言語的抵抗・不平・怒り」が多く認められた.不適応群では全ての処置で「泣き」もしばしば認められた.
5)不適応群の小児に対する歯科医師の話しかけの回数は適応群の1.5倍であった.両群とも「指示」,「説明」が全体の60%以上を占めており,「ほめる」は適応群に,「数をかぞえる」,「勇気づけ」は不適応群に多く用いられていた.各処置における1分間あたりの話しかけの頻度は,ラバーダム装着時が最も多く,充填処置中が最も少なかった.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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