抄録
本研究の目的は,第一大臼歯歯胚の萌出度を客観的かつ簡便に評価することにより,その萌出時期の異常を早期に発見することにある.資料は,1979年12月より1989年6月までの間に,九州大学歯学部小児歯科外来を受診した3歳から11歳までの健常児2245名から得られたパノラマ断層写真2806枚を用いた.X線フィルム上で,第二乳臼歯を明示して4本の基準線を設定し,それに対する第1大臼歯の萌出度を5段階に分類し,
各萌出度に対する歴齢の標準値を求めた.その結果,次のような結論を得た.各萌出度間における月齢分布に有意差が認められた.また左右差はみられず,上顎よりも下顎のほうが,また女児の方が男児に比較して,早い時期に萌出に伴う変化が認められた.
また,異なる診査者,同一診査者における再現性,および被写体の位置づけに関する問題も検討したところ,本法の結果には影響を及ぼさないと思われた.
そこで,調査の結果を基にして標準表を作成し,それを用いて,要観察症例を早期に抽出する事が可能となった.以上により本評価方法は,簡便で有用な方法であることが示唆された.