小児歯科学雑誌
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上顎第一大臼歯のエナメル質表層フッ素濃度に関する研究
第1報マイクロサンプリング法による抜去歯での検討
丹羽 弥奈
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1994 年 32 巻 1 号 p. 100-109

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抄録
マイクロサンプリング法を応用して,抜去歯による上顎第一大臼歯20歯のエナメル質表層フッ素(F)濃度,酸溶解性,Ca/P(重量比)につき,頬・舌側面近遠心部の4部位に対し,0.8-20μmの深さにおいて測定し,次の結果を得た.1)エナメル質表層F濃度は,各深さ共に頬側面遠心部が最も高く舌側面近心部が最も低くかった(p<0.05).2)酸溶解性は,深さを増すにしたがい,増加する傾向にあった.3)エナメル質表層F濃度が高いほど酸溶解性が低い傾向にあった.4)各部位の4層におけるCa/Pの平均値は2.02-2.13と,ほぼ一定の値を示した.5)脱灰の深さは,4層までの平均値で約20μmであった.また,CD(Ca溶出量から算出した値)とOD(SEM像から算出した値)との間に有意な相関を認めた(p<0.01).以上のことより,上顎第一大臼歯のエナメル質表層F濃度は歯面部位別な濃度差の存在が認められた.このことは,唾液の流れ,wear(すりへり),プラークの存在など,萌出後の影響が多大に関与していることが示唆された.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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